バット、それはねねの憧れだ。野球のバットではない、料理用のバットだ。
容器が好きな気質のようで、ボウル、ピッチャー、バット、この3つを雑貨屋などで見かけるとウキウキとときめいてしまう。
何を入れるわけでもないし、特別必要なものでもないので新たに買い足す必要はなかったので今まで買ってこなかった。新たに買って場所を取るのも嫌だし。
看護学校でホーローのピッチャーを使ったときはものすごく嬉しくなったし、今でもたまに色んなサイズのピッチャーが並んだ棚を思い出しては悦悦とする。
病院勤めをしているとステンレス製のバットや膿盆をよく使うのだか、使う度に「はぁ~ステンレスのバット(膿盆)めちゃくちゃいいなぁ~」と思う。
使い終わって洗うとき「はぁ~ステンレス製のバット丈夫だなぁ、水もすっと切れるし清潔、手入れが楽だな~」と思う。
割と身近なものではあるが自分の手の内にはなく所有欲だけがふつふつと湧いてついにバットを買うことにしたのだ。
ねねの独居アパートはキッチンが狭すぎるので実家に買うことにした。
何に使うか、それは包み終わった餃子を乗せるためだ。
他の用途はとりあえず今後考えていくとして、思い立ったらすぐに浅草の合羽橋問屋街に向かっていた。
バットにはステンレス、アルミ、ホーローの素材がある。ホーローはとにかくかわいくてこっくりとしたさわり心地が好きなのだが行った店には売っていなかった。
アルミもいいが軽すぎてちゃっちく感じたのでステンレスのバットを買うことにした。
ステンレスの独特な光、手に取るとひんやりして重みを感じる。あぁ、きっと丈夫でいいバットなのだろうと思う。
サイズ感を何度も確認して1,000円位のやや大きめのバットを買った。
帰り道ガサゴソと持ち帰る。早く餃子を作りたい、と思いながら引き出しにしまった。
そして今日、念願の餃子バットをやった。
あぁ~、いいね、いいですね、わかるわかるわかる。この良さが!まるで餃子職人になったかのような、プロの技みたいな。プロポジションきました。
言うことなし。
これはいい。
ねねはとてもいい買い物をしたと、喜びを噛みしめるのです。
バットの代用はいくらでもあるけどもこのプロポジションはバットにしかできない。
バットにしかできないことをバットは知っている。ねねもねねにしかできないことをバットのようにやっていこうと思った。