変な夢を見た。
手を変え品を変え変な夢をしょっちゅう見るのでそういうもんだと思っているのだが先ほどうたた寝した夢はひどく変な夢だった。
夜の街を歩く。消防署で夜中に放水訓練をしている。見知った私の住む街の普段とは違う風景。
畑では夜中にとうもろこしの収穫作業をしている。
おかしいなと思いながら歩く。
ふと気づくと手に生首を持っている。いつの間に持っていたのか。この人をいつの間に殺してしまったのか。おかしな夜につじつまの合わない行動。不安が恐怖がどっと押し寄せる。
生首の顔はずいぶん青ざめていて死者のものだった。そしてその顔はかつて愛した人のものだった。
両手で大事に生首を持って顔をまじまじと眺める。なぜ私はこの人を殺してしまったのか。憎いことは多少はあったかもしれないが殺さなくてはいけないようなことはなかったはずだ。
青ざめ冷たくなった口は何も語らない。首から滴るものがあった。生きていたという証のようなものだった。
この人にはもう会わないと思っていたけどもう2度と会えないというこの状況をじわじわと恐怖に感じた。
失ってしまった喪失感と奪ってしまった罪悪感。頬をそっと包みなんてことをしてしまったのだろうと悲しくなる。これからその思いを背負って生きていかなくてはならないと思うと生きる力がとけだしてなくなってしまいそうになる。
きっと殺人の罪でこれから捕まる。逃げようはない。この罪は多くの人の目にさらされ社会に裁かれる。それはとても重苦しく怖いものに感じた。
途方にくれてその人に愛していたのよと、生首を見つめる。見つめ合えないこの距離を、その人がいなくなるということを、こんなに怖く思ったことはない。
そんな夢だった。すごく生々しくて怖かった。事後の感情をここまで感じてしまった。それはどんなドラマや小説よりもリアルだった。私として感じたことだったからだろうか。
ずいぶん嫌な夢をみてしまったと気分が重い。失うことよりも奪うことの方が恐ろしいと思った。夢でよかったと安堵する。できればこういう夢はもう2度とみたくない。