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さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

オトコの夢

オトコには夢がある。どんなときも。それが例え声を失い寝たきりの体だとしてもオトコの意識がある限り夢がある。

オトコの夢…それは女子高生との触れあいのようだ。

 

現在ねねが勤める病院は療養病院という。ざっくり言うと急性期の治療を終え在宅療養が難しい患者さんが入院するところである。この病院を出るのは死亡したときがほとんどで終のすみか、といったところである。

多くは70~80代。脳血管疾患後遺症の半身麻痺からの日常生活動作の低下による寝たきり。経口摂取困難による栄養剤の注入や高カロリー輸液管理をしている。

会話できる患者さんは一握り。会話できたとしても認知症による会話のちぐはぐさを感じることがある。

 

今日は寝たきりの失語症の患者さんと話した。話すと言ってもこちらが言うことに対し頷くか首を横にふるかでコミュニケーションをとる。

表情も喜怒哀楽がキャッチできるくらいには豊かであり、おじいちゃんとは言えないくらいの若さなのでつい色々話しかけてちょっかいを出す。まぁなんというかとてもそのリアクションが癒しになるのだ。

 

たまたま耳掃除をしていたので「○○さん知ってる?今はね、JKリフレっていうのがあって女子高生が膝枕で耳かきしてくれるお店があるんだよ~?」と話すと、患者さんは満面の笑みで嬉しそうに聞いている。目はキラキラと輝いていた。

「女子高生に膝枕で耳かきされたい?」と追って聞くとうん、うん、と頷いている。

「ははは~そりゃそうだよね。膝枕で耳かきしてもらったことある?」と聞くとううん、と首を横にふる。ごめんね~女子高生じゃなくて、と思いながら耳をほじる。

 

そのちょっとしたやりとりだったが私までつられて笑ってしまった。それほどに患者さんは笑顔だった。見たことないような笑顔だったので他のスタッフに見てもらいたかったが近くに誰もいなかったのでこのやりとりはふたりだけの秘密としておいた。病院では。ブログには書く。

 

寝たきりとなり、テレビもない病室でベットの上から寝返りもうてない生活。1日3回経管栄養を流され、口からはもう何年も食事をしていない。入浴は週に2回だけ。そんな生活。正直もし自分だったら耐えられるかと考えてしまう。意識がはっきりしていればなおさら。それでも女子高生への憧れを考えるだけで笑が止まらないのだ。オトコのなかで女子高生というのはどんな存在なのか。女神なのかもしれない。

 

この患者さんだけではない。他の患者さんも「女子高生は若くていいよな!女子高生はいいよな!」と言った人がいる。何年も病室で過ごし女子高生の姿なんて見ていない。加えて言うと食べることも歩くこともたくさんの言葉も忘れてしまっているがそれでも女子高生だけは忘れていなかった。

 

女子高生って希望なのかもしれない。ベッドの上から動けずなんの刺激もないただ膨大な時間が過ぎるのを待つ生活のなかで女子高生だけはオトコにとって特別な希望だった。

 

いつか自分が寝たきりになることなど誰が想像するだろうか。ましてそれが明日とか来年とかそんな近い将来で訪れるなんて考えたことあるだろうか?

きっと自分が倒れて寝たきりの生活になるなんてほとんどの患者さんが思ってもみなかったろう。40代でも50代でも脳血管疾患をはじめとするさまざまな疾患による寝たきり状態になることはある。飲酒して、過労で…。きっかけはわからない。

プッツンと血管が切れて見事に脳出血、という人もいる。血圧が高くてね、でも今なんともないし好きなもん食ってポックリいくからいいよ、なんて言っているヒトほどポックリ逝けず麻痺が残り入院生活を余儀なくされる。

 

世の中いつ何があるかわからない。だからこそ好きなことは好きなようにやってほしい。行きたいところへ行く、食べたいものを食べる、ほしいものを買う。いつか、に先回しにしてはいけないものはなるべく早くやっておいた方がいい。

明日は我が身で寝たきりになるかもしれない。もっと言えば死んでしまうかもしれないのだから。

 

療養病院の看護婦さんをやって3年、100人以上の患者さんと向き合って言えるのは、エロに関してだけは看護婦さんやご家族がご希望に応えることはできない。外出許可で風俗やらへ連れていくとか難しい。デリバリー的なのも無理です。そもそも意志疎通が困難な状態でエロをお願いすることが難しいし頼む勇気も相当なものである。万が一お願いされたとしても「○○さんまた言ってる~」とあしらわれてしまうだろう。

エロへの憧れは持ち越さないでいた方がいいと思う。

見たいエロ本、やってみたいエロ、もちろん違法となるやつはダメだがどうしても、というのがあれば、ね。

 

そんなことを、今後も女子高生に触れあえないであろうオトコ達を目の前にして思い、女子高生の代わりに耳を無言でほじりながら思う看護婦さんなのであった。