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さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

祝うことのないあの人の誕生日

大型連休が終わり日常に戻る。ぎこちない日常にぎこちなく身を投じる。5月の夜にしては風が冷たい。夜道を歩きながら京都の夜に想いを馳せる。今日は愛した人の誕生日なのだ。今となってはなんの関係もなく愛し愛されたた日々はただの過去である。きっともう会うことはないし、おめでとうと祝うことのないだろう。それでも1年でこの日だけはあの人のことを思い出すことを許してほしい。

 

最後に誕生日を祝ったのは5年より前になる。京都に住むあの人の家に行き、小さなケーキを2つ買い2人で食べた。ケーキを持ち帰るまでにお皿や他の食材を買い込み荷物が多くなってしまった。雑に持ち帰ったらショートケーキのイチゴが抹茶ケーキに乗っかっていて2人で笑った。私が帰る時間が近づき西陽の当たる部屋でそろそろお別れの時間だという寂しさを押し殺して笑った。

 

この先長く付き合っていけないことをお互い薄々感じていて埋められない物理的な距離は心の距離にも影響し始めた頃だった。誕生日プレゼントはアルバムにした。2人でデートした先々で撮った写真、行った場所の入場チケットも挟み思い出を書き込む。確かそれは誕生日当日には会えなかった為、郵送したのだった。ポストにアルバムが届いて、ページを巡りたいそう嬉しかったと聞いたとき遠距離の寂しさも越えられると思ったがそれは一時的なもので、日々つきまとう寂しさはどんな言葉や会瀬を重ねても太刀打ちできなかった。

 

アルバムの写真のデータを見返す。私もあの人も笑顔だった。カフェで食べたもの、見た桜、撮ってもらった2人の写真、変なポーズをしておどけている。あまりにも穏やかで幸せそうでこんなに笑って過ごしていたのかと驚いてしまった。写真を見返し楽しそうな2人はまるで自分には関係ない人のようだった。幸せだったことは忘れてしまったので思い出せて良かったと思う。あのアルバムはまだ残っているのだろうか。できれば死ぬまでにもう1度手に取りたいものだ。

 

あの日食べたケーキの写真もやっと出てきた。記憶の通りめちゃくちゃになっていて、できればこのケーキのことは死ぬまで忘れたくない。楽しかった記憶なので何回でも思い返すことにしよう。

 

あの人と結婚したいと思っていたが、今では結婚しなくて良かったと思う。きっと私が色んなことをあの人のせいにしてあの人からもらう幸せを大切にできなかっただろうから。

プレゼントらしいプレゼントはもらわなかったけど、「全力で、無理してでもやりきってください」という言葉は私にとってあの頃を生きる為に1番必要な言葉だった。今でもその言葉を大切にしている。あの人のいない世界でも生きていけるが、あの人との思い出と言葉がなければ生きていけない。また来年、このケーキと楽しかった日々のことを思い出そう。

 

あの人へ。

お誕生日おめでとうございます。

直接祝うことはありませんが、たくさんの人に祝ってもらい幸せな1年をお過ごしください。きっと正義感が強く仕事熱心なあなたのことですから毎日慌ただしく過ごしているでしょう。身体はそんなに丈夫じゃないところもあるので無理はしないでください。この先もたくさんの楽しいことや嬉しいことを全力で受け止めるために健康にだけは気を遣ってあげてください。

きっとあなたの強くて優しい正義に救われる人がいます。あなたに救われた私が言うのだから間違いありません。身体が動く限りあなたも全力でやりきってください。陰ながら応援しております。

 

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