ここから先は私のペースで失礼いたします

さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

元遊郭 武雄温泉しらさぎ荘に潜入

人生のうちいつか行ってみたいと思っている場所はいくつかあって、その中のひとつに『元遊郭の旅館』があった。

昭和32年(1957年)、売春防止法が成立し、昭和33年4月1日の同法の施行と共に公娼地域としての遊廓の歴史は完全に幕を閉じている。『遊郭』というものはもう存在しないが当時の建物が旅館や料亭になっている場所がいくつかある。他にはない独特の建築洋式はこの目で見て体感したい。佐賀県武雄温泉にしらさぎ荘という『元遊郭の旅館』があることを知の冒険というサイト↓で知りここに行くことにした。



楼門で有名な佐賀県武雄温泉にある元遊郭旅館「白さぎ荘」に宿泊し、その全貌を取材した!

 

予約は電話にて。インターネットで誰とも話さずに宿の予約ができる時代に電話をかけるのは少し緊張した。すんなりと予約がとれほっとする。


白さぎ荘 | 泊まる | 武雄市観光協会

 

佐賀県武雄温泉駅。駅員さんが切符を回収する駅。Suicaは使えない。昭和から平成中頃へ帰って来た気分。
f:id:sakamotwin:20191108224750j:image

しらさぎ荘まで駅から徒歩10分程。途中にファミリーマートが2件あった。歩いている人はほとんどいない。この寂しさが心地よかった。
f:id:sakamotwin:20191108224941j:image

武雄温泉楼門を少し過ぎたところにしらさぎ荘はある。青い屋根の建物だ。
f:id:sakamotwin:20191108225132j:image

外観からは遊郭に見えない。昭和の民宿といった感じ。
f:id:sakamotwin:20191108225227j:image

f:id:sakamotwin:20191109001839j:image

ひとたび扉を開けてしまえばそこは

f:id:sakamotwin:20191108225322j:image

目眩く赤の世界。興奮と感動が一気に押し寄せる。

 

すみませんと声をかけると少しして宿の人が出てきて2階の部屋へ通される。「階段が急なので気をつけて下さい」の階段が本当に急すぎてロングスカートの裾を踏まないよう気を付けた。

f:id:sakamotwin:20191108225750j:image

鳥の名前の部屋が続く。


f:id:sakamotwin:20191108233703j:image

私の部屋はうづら。窓際の部屋だ。
f:id:sakamotwin:20191108225505j:image

普通の和室。広い。
f:id:sakamotwin:20191108225921j:image
窓の模様がおばあちゃん家みたいだった。
f:id:sakamotwin:20191108225856j:image

f:id:sakamotwin:20191108230025j:image

避難はロープで!
f:id:sakamotwin:20191108233819j:image

難易度高め。
f:id:sakamotwin:20191108233849j:image

窓を開ければ楼門が見えるいい眺めの部屋。
f:id:sakamotwin:20191108233734j:image

浴衣とフェイスタオルが1枚。
f:id:sakamotwin:20191108230156j:image

お茶セットもある。
f:id:sakamotwin:20191108230344j:image

夜はこの和室に布団が敷かれるのかなと思ったら奥になにやら小部屋が見える。

 

あ!
f:id:sakamotwin:20191108230455j:image

まさかのベッドルーム!
f:id:sakamotwin:20191108230529j:image

てっきり布団だと思っていたのでとんだサプライズだった。

 

トイレ洗面所も共有かなと思っていたが部屋についていて驚いた。
f:id:sakamotwin:20191108230625j:image


f:id:sakamotwin:20191108230713j:image

f:id:sakamotwin:20191108230738j:image

砂壁、タイル、和式トイレ、全部昭和で時代を感じさせるが清潔に保たれているのでうれしい。

 

凝った造りの照明、すごく好き。
f:id:sakamotwin:20191108230933j:image

 

「旅館内の写真はどうぞご自由に撮っていってください」と言ってくださったのでお言葉に甘えて写真を撮りまくる。

 

3階への廊下。
f:id:sakamotwin:20191108231136j:image

f:id:sakamotwin:20191108231211j:image

f:id:sakamotwin:20191108231230j:image

鎖が気になるところだがなんでついているかは旅館のご主人もわからないとのこと。手すりがわりなのだろうか?

f:id:sakamotwin:20191108231401j:image

上から覗くとかなりの勾配。気を付けないと落ちそう。自己責任!

 

3階にも部屋がいくつかある様子。

f:id:sakamotwin:20191108232200j:image

お手あらゐ。
f:id:sakamotwin:20191108232253j:image

洗面所のタイルが完全に好み。永遠に残してほしい。
f:id:sakamotwin:20191108232355j:image

3階の窓から中庭を見下ろす。
f:id:sakamotwin:20191108232449j:image

中庭があると特別な場所に来た気分になる。当時の遊郭に来た客もそう思って心を踊らせたりしただろうか。

 

再び2階へ。
f:id:sakamotwin:20191108232928j:image

赤い絨毯の廊下は雰囲気がいい。

 

共有トイレ洗面所にの床がTHE昭和。こんな素敵な床他ではなかなか見られません。
f:id:sakamotwin:20191108233029j:image

共有トイレには洋式トイレもあるのでご安心を。

 

この鏡を覗いたらタイムスリップできたりして。
f:id:sakamotwin:20191108233210j:image

奥にも部屋がある。全部で何室あるか聞いておけばよかった。

f:id:sakamotwin:20191108233327j:image

共有トイレの横を抜け1階へ。
f:id:sakamotwin:20191108233608j:image

これが噂の太鼓橋。緩やかなアーチが美しい。
f:id:sakamotwin:20191108234030j:image

先ほど見下ろした中庭を見上げる。
f:id:sakamotwin:20191108234124j:image

回廊を行き来する遊女や客はぼんやりと中庭を眺める時間もないだろうけどふと視界に入る植物や空があるのは贅沢なことだ。
f:id:sakamotwin:20191108234207j:image

木の格子っていいなとつくづく思う。
f:id:sakamotwin:20191108234357j:image

 

これは…もしかしたら陽が沈んでからの方が雰囲気がいいかもしれない。またあとで写真を撮りにくることにした。

 

夜の帳が降りる頃、

f:id:sakamotwin:20191108234716j:image


f:id:sakamotwin:20191109234642j:image

赤が一段と映える。
f:id:sakamotwin:20191108234630j:image

中庭は夜に本領を発揮した。
f:id:sakamotwin:20191108234831j:image

f:id:sakamotwin:20191108234920j:image

f:id:sakamotwin:20191108234944j:image

文字が書いてある。
f:id:sakamotwin:20191108235059j:image
以義為利利自?

利をもって利となさず、義をもって利となす、のことだろうか。写真を見返して気になってきた。またいつか行くことがあればもっと良く見てみよう。

 

ちなみにお風呂は1階にある。1ヵ所しかないので入るときに男湯か女湯の札をかけて入るようだ。鍵もかけられるようなのだがどう入るかシステムがわからなかった。誰もいないときにこそっと写真だけ撮る。

f:id:sakamotwin:20191108235857j:image

洗い場は4ヵ所。シャンプーとボディソープはある。
f:id:sakamotwin:20191108235950j:image

浴槽は広い。ライオンの口からジャバジャバお湯が出ていた。
f:id:sakamotwin:20191109000141j:image

脱衣場も広々している。
f:id:sakamotwin:20191109000231j:image

 

しらさぎ荘の目の前には武雄温泉の公衆浴場があるのでそこで入浴を済ませるのもいい。お湯は無色透明だがとろりとしていて肌がすべすべになる。私は公衆浴場でお風呂を済ませた。

 

夕食を外で済ませお風呂に入ってご機嫌で宿に戻る。あのベッドで眠れるかな、夜中目が覚めて怖くて眠れなくなったらどうしようという不安があったが疲れていたのか朝までぐっすり眠ってしまった。

 

翌朝。

朝食は宿で食べた。お茶がやたらとおいしくぐいぐいのんでしまった。

f:id:sakamotwin:20191109000645j:image

食堂には誰もいなかった。隣のとなりの部屋に泊まっていたおじさんは朝早く出掛けたようだ。すでにチェックアウトしていた。

 

支度を済ましチェックアウト。

宿のご主人が昔の写真を見せてくれる。ここらへん一帯は遊郭だった歴史を軽く話してくれた。(詳しいことは冒頭の知の冒険のサイトを参考にしてください)

f:id:sakamotwin:20191109000840j:image

昭和23年。この10年後に遊郭が廃止になるなどこの写真の中の人たちは想像できただろうか。

当時の遊郭のことを知る人もほとんどいないだろう。ご主人は「ここはもう私の代で閉めますから」と言っていた。寂しい気もしたが止めないでくださいと無責任なことを言えるわけもなく寂しそうに「そうですか…」と答えた。

いつなくなるかわからないからこそ今のうちに訪問できてよかったと思う。快く泊めてくれたことに感謝している。

いつまでも同じようにあると限らない。現代にまた同じような建物を作ることも不可能だろう。歴史のある場所は気になったら1日でも早く行った方がいい。明日また同じようにあると思ってはいけない。またいつかここに来られるだろうか。できればまた行きたい。それほどに素敵な場所だった。

 

武雄温泉しらさぎ荘  2019.11月訪問