仕事の帰りに川口そごうに行こうと思った。
川口そごうといえば幼少期にしばしば叔父に連れていってもらいクリームソーダやパンナコッタ、ナタデココなど当時最先端のものを食べさせてもらった。
駅から直結する3階の入り口にはからくり時計があり定刻になるのを待ち小人の演奏を聞いてすごいとはしゃいだ。デパートという場所が楽しくきらびやかな時代だった。
そんな川口そごうも2021年2月に閉業するという。思い出の場所がなくなる前に懐かしむように川口そごうに行っておこうという気持ちが今は大きい。
なんの下調べもなくなんとなく行ったらうまいもの会という催事が執り行われていた。
諸国のうまいものを集めてきた物産展のようなものである。
からくり時計を通りすぎエントランスのスペースでお菓子や漬物、乾きものが売られていた。これはこれはと思いながらぐるりと一周する。
いつぞやにテレビで見たことのあるローカルパンイギリストーストが売っていた。関東近郊では売られていないので実物は初めて見た。即買いである。
物産展はこういう出会いがあるから大好きだ。地方にしょっちゅう出かける機会もないので遠くへ出掛けた気分にもなれる。味の種類がいくつかあって悩んだがラムレーズンのイギリストーストを買った。
この時点でかなりうかれている。予期せず憧れの品が買えたので。催事場でもうまいもの会をやっているとのことでエスカレーターで上層階へ向かう。平日ということもあり昔のような賑やかさはなかった。静かに4列のエスカレーターが誰もいなくても同じ動きを繰り返す。
催事場に着くとまさかの赤福が売っていた。赤福を食べたいとずっと思っていたので今日川口そごうに来たのは運命かと思った。たまにそういう奇跡を感じては素晴らしき人生かなと思う。
赤福は即買いしてめめ(妹)にLINEした。赤福を買ったのでホットサンドにしよう、と。
他にも美味しそうなものがたくさんあったがこれ以上はカロリー過多となるので買うのをやめた。
靴売り場に立ち寄った。店員さん同士が「今年の冬は暖かいね。ブーツが売れないね。四季がなくなってきたよね。」と話していた。全くその通りだな、と思う。一緒に話したくなるくらいだった。四季がないというか暑さだけがきつくなる未来をどう生きていこうかと少しだけ考えた。
駅前の川口そごうが来年閉店、駅から少し離れた場所のイトーヨーカドーはずいぶん前につぶれてプライスというスーパーがあったがそれは解体され今は更地となった。これから何ができるのかは知らない。知っている街が様変わりをする様を見届ける。変わらないでいてほしいと思うけど、見届けるしかできないちっぽけな人間である。
赤福はめめがいるときにホットサンドにした。
いつみても美しいこしあんの曲線。
やさしい甘さ、とろける餅がおいしかった。
次はちょっとアレンジ。
バターをしいたホットサンドメーカー。バター赤福ホットサンド。
こちらはこちらでおいしい。バターが芳しい。赤福を加熱すると餅部分がとろりとやわらかくなるので気になる方はぜひ試してほしい。
残りの2つの赤福は普通に食べた。やはり安定のおいしさがあった。
イギリストーストも食べてみよう。
半分はそのまま、もう半分はホットサンドメーカーであぶってみた。
そのままのほうはしっとりしていておいしい。
ホットサンドにしたほうは外カリカリ、中は溶けたクリームがじわっとしみておいしい。どっちもいい。色んな食べ方を持つということは色んなおいしさに出会えることだ。ホットサンドメーカーはすごい。
またこうやってうまいもの会を川口そごうでやってほしいと思う。閉店してしまう店への寂しさがホットサンドを食べたあともうっすら心にしみて何とも言えない気持ちになった。
※川口そごうのうまいもの会は1月21日まで。お近くの方はぜひ!