その部屋を目の当たりにしたとき喜びや嬉しさといった感情のダムが一瞬で崩壊し「はぁ」とため息をついてから「すごい」と言って跳び跳ねて喜んだ。 ホテルナポレオンルイ13世の部屋のことである。
この類い稀なる昭和ラブホテル、ナポレオンの部屋のなかで最もきらびやかな世界だろう。
人気のない昼下がりのホテルナポレオン。
ルイ13世のお部屋に入る前に息を整えた。すごい部屋だということは事前に本で見ていたから。
見たいと思った部屋が空いていたときの喜びはラブホ愛好家の人ならよくわかるだろう。
入室してから部屋全体が暗い。そういうルームメイクのようだ。暗がりのなかスイッチを一つずつ探りながら灯りを点けていく。
そこにベッドがあるということは辛うじてわかる暗さ。
点灯。
まるで舞台のようなベッドだった。
幕が開いたときのような高揚感。このきらめき。何かが始まる気がした。
きっとこのドレープのきいたカーテンのせい。
スイッチでカーテンの上げ下ろしができる。
この3段の階段もまた特別な世界へ誘うためのもの。
ベッド周りは鏡張りとなっていていくつもの我々が写し出される。愛の数が多ければ多いほどいいならば鏡の数も多ければ多いほどいい。
恥ずかしければカーテンを下ろすこともできるけど、この部屋の大胆さに恥ずかしさなんてすっかりなくなると思う。
このベッドは現役稼働する回転ベッドである。ゆっくり回るベッドに揺られて鏡を見送り部屋を眺める。良い景色だ。
きっと大切に使われてきたのだろう。貴重なベッドだよ。
こちらの部屋にもモンローシーソーベッドがある。
天井はばっちり鏡張り。エロスってこういうことなんだと思う。
情熱的なレリーフ。
ソファーでくつろぐ暇もないだろうな。
いや、でもくつろげるようになってるんだよ。
お茶でもコーヒーでも。
なぜかエマニエルの部屋の写真が飾ってあった。
この部屋も行ってみたらというお誘いなのだと思う。
※ホテルナポレオンエマニエル編はこちら↓
ホテルナポレオンという運命~エマニエル編~ - ここから先は私のペースで失礼いたします
廊下も赤絨毯。贅沢なお部屋だ。
さてこの透ける場所はなんでしょう?
わかりましたか?
正解は浴室でした。
黒と赤と白の浴室。めったに見かけない色合い。洒落てるね。
アメニティも充実しているのがうれしい。
洗面所も清潔感があって使いやすい。
ここら辺は昭和ラブホテルと言いつつもしっかり今風。
タオル類はこの中に。
いつも思うけどこういうホテルグッズ、販売してくれないかな…。名入のタオルとかガウンとか。メモ帳とか、欲しい人は結構いると思う。
お手洗いもしっかり今風なので安心してお越しください。
廊下に窓があるが、しっかり二重窓になっている。
さすが雪国のホテル。
ちなみに景色は塀のみである。カメムシが入ってくるかもしれないらしいので開けっぱなしには気を付けて。
昭和のきらめきが眩しいよ。
のどから足が出るほど来たかったこのホテル。
実物は想像以上の美しさだった。生きているうちに見られてよかった、思い残すことはない、という気持ちと、またここに来てあのベッドを見たいという気持ちになった。思い残すことはないというにはまだ早いだろうな。もっとこのきらめきを見ていきたいよ。
また行く日までどうかあなたもお元気で、ルイ13世よ。
2020年10月訪問