ファミリーレストランという懐かしい響き。
久しぶりにこういう場所へ来た。ここは川越のまるひろ百貨店、屋上に観覧車のある数少ないデパートだ。今の子どもは屋上遊園地など知らないのではないか?
屋上遊園地は消防上の理由の他、少子化による幼年人口の減少やレジャーの多様化等といった様々な要因に伴い、各地域で屋上遊園地の閉園が相次いでいる。
昭和59年生まれのねねとしては屋上遊園地のお世話になって育っているのでこういう場所には懐かしさを感じる。
そうそう、最上階にファミリーレストランがあって、入り口のショーウィンドウに食品サンプルがあって、お子さまランチやメロンソーダが手の届かない特別な物感を出していたっけ。ここにはそれがまだあった。
せっかくなのでオムライスを食べることにした。
西日の当たる席に座る。
ランチタイムを逃していたので昼下がりにのんびりする家族連れがぽつりぽつりといた。
妙に広い店内に妙にたくさんいるややお年を重ねた丁寧な店員さん。注文を伝え静かに待つ。
ザワザワと話し声が聞こえるが、皆穏やかな声で話している。心地の良いザワザワだった。
しばらくしてオムライスが来た。
本当はお子さまランチを食べたかったがさすがに33歳の女が独りお子さまランチを食べていたら幻想の子どもにお子さまランチを食べさせるやばい奴みたいになってしまうのでやめた。
普段セットドリンクはコーヒーを頼むが今日は暑かったのでレモネードを頼んだ。
程よく薄めの味付け。あっさりとした味でこういうのが食べたかったんだよなと思う。今の食べ物は飾りすぎている。飾らないものが恋しいのだ。
レモネードのシュワシュワを見ていたら始めてメロンソーダを飲んだときのことを思い出した。
それは多分7歳位の頃、伯父の住む駅にデパートができた。そこにも屋上にファミリーレストランがあって、店内には木のオブジェみたいのがあった。子ども心に遊園地みたいでファミリーレストランで過ごす時間に心踊らせた。
そこでメロンソーダを頼んでくれたのだと思う。
まだ子どもで炭酸が辛くて飲めなくて、白いアイスを溶かしながら緑色のシュワシュワを混ぜてゆっくり飲んだっけ。
母は着色料や甘いものを外で食べさせることを好まなかったのでこの伯父が食べさせてくれるものはいつだって甘美で魅力的だった。その伯父もあるとき急に亡くなりあのときのお礼はいつまでも言えないままでいる。もし今も生きていたらありがとうとあのときは子ども心に嬉しかったという話をしたかった。
レモネードを飲みながら、初夏の気候の西日に目を細めながら、店内のザワザワを聞きながら色んなことを思い出す。言えなかったありがとうはレモネードの泡のようにぷくぷくとわいてきた。