赤福、それは世のあんこ餅好きを唸らせる魅惑の食べ物だ。関西では比較的手に入りやすい赤福だが、遠く離れたねねの住む関東、埼玉では赤福は買えない。たまにデパートの物産展で買えることもあるが基本的には関西に出掛けたときに買うものなので、赤福は年に数回しか食べられない至極の逸品なのである。
お馴染みの桜色の包み紙、赤福の文字。ほまれである。
包みを開けると滑らかなあんこの流れにうっとりする。ヘラですくうも大抵崩れてしまう。赤福の醍醐味。
品の良い甘さと、ねっとりしたあんこ。餅が柔らかく伸びる。急須で丁寧に煎れたお茶が飲みたくなる。実家にいたときは一人一個ずつ、とみんなで分けて食べた。あと何個残ってるから明日早い者勝ちで食べるのがうちのルール。赤福は幼少期から特別で馴染みのある家族の思い出のお茶菓子だ。
埼玉にも赤福があればいいのに、と思った。埼玉にはおもたせ銘菓が少ない。あの十万石まんじゅうも県外の人は知らないらしい。
十万石まんじゅうを食べたことのない人のために十万石ふくさやへ行ったらこんなものが売っていた。
あん餅というらしい。
餅をあんこで包んだやつ。これは埼玉の赤福かもしれない。ならば食べるのみ!と思い買ってしまった。
http://www.jumangoku.co.jp/shyouhin/shyouhin.html
十万石ふくさや|商品一覧
十万石ふくさやの商品ホームページに載っていないのはなぜか。これは架空の銘菓?
これは…埼玉の…何?
すくうやつあった!赤福みたい!
食べると赤福ではなかった。
埼玉銘菓の秘技、めちゃくちゃ甘いを全面に出している。埼玉のお菓子はめちゃくちゃ甘い。十万石まんじゅうにしろ彩果の宝石にしろ。
ちょっとこう繊細さに欠ける。もちろんおいしいけども、赤福のあの味には遠い。同じようなものだけど同じではないのだ。
赤福の代わりなど埼玉にあるわけがなかった。甘いあん餅を食べながら赤福のことを考える。世の中にはおいしいものがたくさん溢れているけども、これじゃなきゃ、そう、これこれ、と食べるものがある。それを食べる日のことを楽しみにして生きるのもいいだろう。手に入りにくいからこそ手に入れたときの喜びがあるのだ。