ここから先は私のペースで失礼いたします

さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

おなら、してる?

人間はおならをする。私もあなたもおならをする。生きているからおならをする。一説によると人間は1日10回くらいはおならをしているらしい。日常にありふれた行為であるし、生理現象であるのにおならは人に聞かれたりすると恥ずかしいのだ。

1日全くひとりでいられればいつなんときおならをしても恥ずかしくない。だけど毎日ひとりでいられるわけがない。通勤中、職場で、スーパーで、ふいにおならをしたくなることもある。そんなときは我慢したりもするが後々お腹が張って苦しくなる。最終的にガスの貯留が原因となって腹を壊すこともあるので我慢はよくない。

仕事のときはしらっとトイレに行ったり誰もいないところでそっとすることもある。常に動いているので匂いもそんなに気にせず何とかなる。

 

1番困るのはデートの時だ。

まぁそもそも最近はデートのデの字すら風化して遺跡となっているようなもんだが、異性の前でおならなどした日には死にたくなる。いっそ殺してくれと私の中の乙女がリストカットを始める。カットしたあとお湯につけて止血させない本気のやつのようだ。

乙女よ、乙女、聞きなさい。おならは仕方ない。生きているのだから出るのです。多分彼は気付いていません。だからリストをカットするのをやめなさい。と私の中の中年女性が語りかける。この中年女性はどこでもおならをしてしまうタイプのようだ。肛門が緩いのか「力入れたらおなら出ちゃった」と悪気もなく言うタイプ。実際気が緩むと力仕事のときにおならが出てしまう。「せーのっ、ぷっ」というのも30歳を越えてから増えてきた。そういうときは社会的に終わった、と思う。私の中の中年女性が気にすることなんてない、と図々しく語りかけるのでなんとか生きている。

 

過去にうっかりおならをしてしまったときは多分気付かれていないだろうマインドでしらばっくれた。それしかできない。無理。『私じゃない』という強い気持ちでいればなんとかなるのではないか。そう信じている。

 

お泊まりデート、というのは厄介だ。夕食を食べても一晩寝る時間を共にする。下手したら12時間近く一緒にいることになる。1日10回おならをするということはこの12時間に5回おならをすることになる。危険。デートで喋ったりすると緊張して空気を飲み込んだりするので余計おならが出る。そもそも私は空気を飲み込みやすいみたいでおならがよく出る。ぶーーーっとおっさんみたいなおならが出ることもある。こんな姿は誰にも見られたくない。独り身の部屋に響くおならの音に絶望すらすることがある。なにしてんだよ、私は、と。

 

おならをしてはいけないと思えば思うほどおならをしたくなるし、お腹はぽんぽこ張ってくる。おならを我慢しすぎてお腹が苦しい。なんとか我慢するが、そういうことがあるので他人とお泊まりするのが苦手だ。おならができないから、それだけの理由。早く帰っておならがしたいと思う。

 

昨日女子の友人とパジャマパーティーをした。気心の知れた友人ではあるが2人で同じ部屋に泊まり同じトイレを使うというこの状況に緊張を強いられた。

 

…おなら大丈夫だろうか。

 

心配で夕食は細目に食べて部屋で恋の話や仕事の話に花を咲かす。普段ならおならをひねり出すタイミングでぐっとこらえる。

 

結局シャワーを浴びたタイミングでシャワーの音にかきけしてもらいながら3回ほど静かにおならをした。においにも勘づかれないだろうし、完全犯罪とはこういう方法だよなと思った。

 

シャワーを浴びておならなんてしてませんよと堂々とした顔つきで部屋に戻る。

『よし、もうこれで大丈夫、あとは明日の朝のお勤めさえ乗り越えれば…』

おならのことばかり気にしながら就寝した。

 

朝おならをしたい気持ちはなかった。さわやかだった。多分寝ている間におならをしたのだろう。友人はかなりぐっすり寝るタイプの女なので気付いていないはず。完璧だ。おならをしない女を演じきれている。

 

朝食会場ではたくさんのパンが出てきた。お腹いっぱい食べたらお腹が痛い。朝のお勤めの時間だ。

 

部屋のトイレは絶対に使いたくない。友人に大きい方の気配を感じさせたくないからだ。ロビーのトイレに行く旨伝えいったん解散した。心置きなくトイレが使える。お勤めは無事終わり穏やかな気持ちになった。これでおならから解放されると思うとほっとした。

 

みんなおならをしていないかのように生きるのが上手だよなと思う。臭いし変な音するし恥ずかしい。34歳になってもおならのことでぐじぐじ悩んでしまうのだ。おならがもっとかわいらしい音ならよかったのに。そう思わずにはいられないのだ。