京都に行くと必ず行く喫茶店がある。三条にある六曜社という喫茶店だ。
初めて行ったのは6年前だったと思う。夏の暑い日に八坂神社と知恩院を巡って、雑誌に載っていたこの店に来た。
地下へ続く階段を下りると飴色の世界が広がっていた。優しい光に包まれたカウンターに座りアイスコーヒーを頼む。1杯1杯丁寧に注がれるコーヒーを目の前に出されたとき大人になった気がした。火照った身体に染み入るおいしさだった。それから京都に行く度に六曜社に寄ることにしている。
必ず頼むのはハウスブレンドのコーヒー。夏はアイス、冬はホットだ。それと挽いた豆も買う。家でも飲めるように六曜社のコーヒー豆を持って帰るのだ。さすがに六曜社のそのままの味を完全に再現できるかというとできないが、味わい深くて特別なコーヒーとして飲んでいる。たまにドーナツも頼む。これがとても美味しい。外がカリっとしていて優しい甘さのドーナツはコーヒーによく合う。
今週大阪に行ったついでに京都にも寄ってきた。六曜社に行くためだ。半年ぶりの六曜社に心が踊る。
最近は混んでいて待つこともあると聞いた。観光客が増えたのだろう。だから行くときは12時の開店直後を目指して行く。ティータイムは混んでいるだろうと思うので空いている時間でひっそりとコーヒーとあの空間を楽しみたいのだ。
地下の扉を開けると女性グループ客が何組かいたがカウンターが空いていたのでカウンターに座る。このカウンター席にはよく座るので特等席みたいで好きなのだ。
その日は暑かったのでアイスコーヒーにした。
ティーカップみたいに受け皿がついてくるのが六曜社スタイル。豆も頼んで挽いてもらう。
1口目はブラックで。気が向いたらミルクを入れて。
溶けていく。この色が好き。
コーヒーミルクを入れてまろやかになったコーヒーを味わいながらいつきてもおいしいコーヒーと変わらない店内にほっとしてしまう。いつでも来られる距離ではないけど、たまに来たときに変わらずにあるものというのをいくつか持っておくのはいい。
色んなことを思い出しては懐かしさに目を細める。変わったことも変わらないことも全部含めて私のものだ。
いつまでも同じように同じままでというわけにはいかないことばかりだから、変わらない六曜社の飴色の光を見ると心がまろやかになるのである。
目まぐるしく変わっていくこの世の中で、これから迎える新しい時代になっても、いつまでもこのままであってほしい。