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さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

おっさんのモテ仕草

勤め先の病院にはおっさんがたくさん入院している。じいさんもいるがおっさんもいる。個人的な主観で分けるなら70代までがおっさん、80代以上はじいさんになる。

色んなおっさんがいて、色んな理由で寝たきりとなり、色んな病院を転々としてここへやってくる。やって来る頃には寝たきり歴が数年にも及び皆体重が嘘のように落ちている。30㎏、20㎏の患者さんもいる。たまに寝たきりほやほやの人が50㎏、60㎏あるいはそれ以上あると皆「大きいね~」と騒ぎ立てる。重い人を全介助でオムツ交換、入浴、更衣などなどをすると本当にしんどい。重くて大変なのだ。

「俺は好きなもんたくさん食ってぽっくり逝くんだ」とか言って体重のコントロールもできない人ほど脳血管疾患になって後遺症で寝たきりになってうまいもんが一生食えずに生きているおっさんもけっこういるので「俺は好きなもん食ってぽっくり逝くんだ」の逝けない論を私は信じてる。そしてそういう人がめちゃくちゃ重くて看護師さんヘルパーさんの腰を砕いていくので「だからぽっくり逝けないって言ったじゃん!(直接は言ってない)」と叱る。体重コントロールだけはしてくれよな!と思っている。

 

話は逸れたが、寝たきりであってもおっさんはおっさんだ。寝てるだけで汗をかいている。寝てるだけで顔がギトギトになっている。寝てるだけで髭がぼーぼーになっている。寝てるだけで痰が絡んでゲボッゲボッうるさい。うわ、さっき顔拭いてテープ張り替えたのにもう脂でギトギトだ。おっさんは手がかかる。 

「はぁ~手がかかりますな~!」とか言いながら患者さんひとりひとりラウンドする。おっさんの脂ギトギトの顔を拭きにおしぼりをたくさんもってワゴンを転がす。

最近入院したばかりのおっさんの部屋に行く。前頭部から頭頂部がハゲ上がり、耳上の微かな気はくせ毛なのかチリチリしている。毛に関しては絶望要素しかない。顔も脂でギトギトさせながらつまらないワイドショーを心ここにあらずといった表情で見ている。

「お~い、○○さん、顔拭くよ~ん」と言いながら顔を見る。なぜか上目遣いでこちらを見てくるおっさん。

「(なに?このかわいい表情は…)」

おっさんはなぜか子犬のような上目遣いでこちらを見てくる。なぜだかわからないがかわいい。おっさんのくせにかわいい。いや、おっさんにこんなことを思ったって仕方ない。胸をきゅんとさせてしまったことがきゅん損な気がしてショックだった。

 

用事を済ませ退室する。

他のスタッフに「あの新入りさん(入院したての患者さんを新入りさん、新しい人などと呼ぶことがある)、なんか、ちょっとかわいくないですか?」と聞いてみたら、「なんかかわいいよね?」と言われたので他の人の目にもかわいいと映るらしい。 

ならおっさんもモテ仕草を学んだほうがいい。どうせなら皆にかわいがってもらったほうが楽しいだろう。上目遣いでかわいこぶりっこして看護師さんたちにかわいがられる入院生活も悪くないのでは?

笑顔、「ありがと」の一言、しっかり目を合わすとこ、これさえ押さえておけばモテる。残存機能でモテ技をどこまでできるか。無愛想にやってもらって当たり前というスタンスじゃもうやってけない、これからはおっさんも媚びてモテ仕草をしていく時代なのだ。頑張れおっさん、かわいいのために、モテのために生きるのだ‼️