看護師さんのなかに『憑いてる人』がいる。その人に『何』が憑いてるかはわからない。私は幽霊が見えるわけではない。だけど「絶対何か憑いてますよね!?」と聞きたくなるようなことばかり起こるのだ。
どこの病棟にも『憑いてる人』はいると思う。『憑いている人』にも種類があって、
・急変にあたる人
・入院患者がたくさん来てしまう人
・転倒やチューブ類自己抜去等の患者由来のインシデント事案にあたる人
・ステルベンにあたる人
などなどがある。
ちなみに私は『憑いている人』ではない。比較的穏やかに業務が終わる人だ。たまにインシデント事案に当たる人になり1日でチューブ自己抜去が2回続いたときには「今日はもう終わったですわ…」とぼやいた。
入院にあたる人というのは本当にあたる。「あぁ、今日の夜勤○○さんか、じゃあ明日患者さん増えてるだろうね」と笑って帰ると次の日げっそりした○○さんが「昨日入院4人も来て休憩とれなかった」などと言う。
病棟や配置状況にもよるのでその現場で何人入院が来たら大変かというのは違いがあるが、だいたい伝説となって語り継がれる『○○さんの夜勤のときの入院□人』という記録は○○さんがまた更新していく。
私の友人は40床の病棟に一晩で10人以上入院が入ったと伝説の夜の話をしてくれた。この友人も間違いなく『憑いてる人』である。そういうときは「それはやばいからお祓い行った方がいいよ」と言う。こういうやりとりは病院内や看護師同士でよくある(と思っている)。
先日ステルベンにあたる人と一緒の勤務になったとき「本当にこの人は憑いてるな」と思った。もともと終末期病棟なのでステルベンがあるのはおかしなことではないが、『憑いてる人』のときにステルベンが重なることがある。これはその看護師が良からぬことをした、という話ではない。意味の受け取り方を間違えないでほしい。死はあらゆるできごとのひとつだ。患者さんが吐いた、便出た、ベッドから落ちた、チューブを抜いた、モニター引きちぎった、スタッフは起きた出来事に対応するだけ。ステルベンもそれと同じ。シビアさは違うけど我々がコントロールできることではないという話。なのになぜかよくステルベンにあたる人がいるという話。
ステルベンにあたる人の勤務がもう少しで終わるとき、モニターのアラームが鳴る。あぁ、やっぱり○○さん憑いてるなと心の中で思う。患者さんの終末期経過をある程度は予測していても今だとは思わなかったなのタイミングってある。あの人に憑いているのは何なんだろうか。
ひとつ言えるのは『憑いている人』はだいたい真面目で気立てが良くて穏やかな人である。ステルベンがあたる人については患者さんが「この人に看取ってもらいたい」と思っているのかもしれない。憑いているのではなく本当は『選ばれた人』なのだろう。