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さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

臨床看護師から看護学生さんにお薦めしたい闘病漫画3選+医療漫画1選

 拝啓

風薫る5月となりました。

緊急事態宣言が出されて休校中の看護学生の皆様、いかがお過ごしでしょうか。課題が多いかと思いますが、学校が始まったら更に忙しくなると思うので今のうちにはっちゃけて遊んでおいてください。とは言えないので、臨床に出たとき患者さんの気持ちに寄り添うときのヒントになれるようなWeb漫画を紹介しますので是非読んでみてください。

(申し遅れましたが私さかもツインねね、病院勤務15年目。看護学校実習の思い出はICUの救急カートの説明を聞きながら立ったまま寝てたこと!マジでキツかった。実習は2度とやりたくないしできるもんじゃない。記録の終わらない朝4時明るくなっていく空を見ると絶望していた記憶がよみがえるので夜明けがちょっと苦手な35歳独身。得意なケアは口腔ケア、苦手なのはトイレコール←えっ今?というタイミングで呼ばれるから)

 

 

まずはさかめがね先生の『憂鬱くんとサキュバスさん』

いきなり精神科疾患ですいません。

こちらから読めます↓


[第1話] 憂鬱くんとサキュバスさん - さかめがね | となりのヤングジャンプ

人の精を吸い、糧とする恐ろしい悪魔「サキュバス」。 彼女がターゲットに定めた青年は日々の過酷な労働に心身を消耗し性欲すらも失うほどの憂鬱な状態。だが、このサキュバス、幸か不幸か非常に前向きであった。 青年を癒し、再び性欲を取り戻させるため、強引に居候生活を開始してしまう!

憂鬱なユウとサキュバスのさくまさんのかけあいがおもしろいです。精神疾患というのは自分の考えの及ばない場所で繰り広げられる世界なので疾患を理解するというのはかなり難しいです。医療系のドラマを見ていると病気になる→スタッフ頑張って治療する→患者さんが治療をうける→治る→ハッピー!みたいな分かりやすいストーリーですが、この漫画は寄り添うに重きがおかれていてとてもいいです。

 

特にいいのが13話。


[第13話] 憂鬱くんとサキュバスさん - さかめがね | となりのヤングジャンプ

眠れないある日夜中にユウが布団のなかで泣いているのに気付いたさくまさん。

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隠れて泣いていることを一瞬せめてしまいそうになるのですが…
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そっと抱きしめるまでのこの表情とやさしさ。

これを見たときはさくまさんのやさしさに泣きそうになってしまいました。

辛いことなんかを無理に聞き出して解決できるならみんな悩みやしないです。解決できないから悩むし言えないこともあるわけでじゃあ周りの人はどうしたらいいのか、というときに寄り添う、見守る、だけでいいこともあるのです。

何でも話聞くよ!と元気よく話しかけるのも、そっととなりに座って外の様子を見たりしながら一緒の時間を過ごすのもいいのではないでしょうか。

もちろん人、状況それぞれなので正解はひとつではないし一概に言えないのが看護の難しいところなのですが対応という手札はたくさんあった方がいいので無理になにかをしなくてもいいという手札も1枚持っておきましょう。

 

ねねが精神科実習に行ったとき短期看護目標のひとつに「髭を剃る」というものを挙げたのですが、指導者さんに「患者さんが髭を剃る必要性を感じて自分でやるように働きかけましょう。でもできなかったらそれでいいんです。」と言われました。実際には1度くらい剃ってくれたかな。「できてないじゃない」じゃなくて「できなくてもいい」という関わりは大切ですね。

 

 

次におすすめしたいのがこちら。

島袋全優先生の『腸よ鼻よ』

https://ganma.jp/chohana/0fe58e00-d8ea-11e9-8d9b-d641a45dec6c/0

潰瘍性大腸炎(大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患、国の指定難病のひとつ)の闘病ギャグエッセイ漫画です。現在単行本2巻まで発売中!

 

難病?潰瘍?聞いただけで「大丈夫?死んじゃうの?」と不安になるワードが盛り込まれていて踏み込みにくい領域かもしれませんが島袋全優先生のギャグを描く力が全てをカバーします。めちゃくちゃおもしろく潰瘍性大腸炎を知ることができます。

51話、ついに手術をした全優先生。

https://ganma.jp/chohana/0fe58e00-d8ea-11e9-8d9b-d641a45dec6c/0

術後のICUより。
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うん、わかる。こういうめちゃくちゃシビアな状況でも動こうとする高齢者、たくさんのチューブ、ドレーンを無視して動いた先に見えるものは…看護師さんたちの見たこともない顔と絶叫でしょうね。


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術後の痛みの描写がリアルです。急性期、慢性期(憎悪期寛解期)もわかりやすく展開されているので万が一消化器病棟実習で潰瘍性大腸炎の患者さんを受け持つことがあれば是非一読を。

 

余談ではありますが昔付き合っていた人が潰瘍性大腸炎患者さんでした。「俺辛いもの一切食べられないんだ」と言うので「なんで?嫌いなの?お子ちゃま舌なの?」聞いてもなかなか答えてくれずしばらくして潰瘍性大腸炎で刺激物が食べられないということを知ったとき、自分の浅はかさを恥じました。

きちんと打ち明けてくれた彼はすごい人ですよ。病状が安定していて調子が悪いときに薬を飲んでいたらしく「もし薬忘れちゃったときのために持っててくれる?」と言われて預かった赤い遮光パッケージの内服薬は少し重たかったです。寄り添う寄り添う言っておきながら実際にお腹痛いという場面に立ち会うとおろおろして薬を渡しておろおろしてしまうのです。抱きしめて泣きたくなっちゃうよね。患者さんに寄り添うなかでしっかりしなきゃと思っても何もできないという無力感に負けてしまいそうになることもあるのです。

 

 

最後はこちら。

澤江ポンプ先生。

リイド社からパンダ探偵社、近所の最果てという単行本が出ています。


トーチweb パンダ探偵社

 

人工肛門の様子などの漫画をpixivで見られます。


澤江ポンプ - pixiv

 

治療の辛さとかありのままの気持ちが描いてあります。前向きにとか頑張るとか、一旦そういうのは置いといて今のこの状況とどう向き合ってるか。

気を紛らわすため過去や未来の話をしそうになるけど今と向き合わないと。フォーカスが完全に今という姿勢がまっすぐで辛そうなシーンも目を背けないで見つめてしまう。
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点滴やドレーン類の描写も素晴らしく丁寧に描かれてます。

Twitterアカウントは削除されてしまいもうみられないのですが、放射線治療をしていたときに肛門周囲がただれてお通じのたびに痛いという話を医者にしたらあっさりとした対応(治療上予測される副作用であるため)だったが、放射線治療の看護師さんか技師さんに同じ話をすると「きゃ~痛そう!」と話を聞いてくれたことに対し「(なにこれ、きもちいい)」とニヤリとする漫画があったのです。

 

共感とか話を聞く姿勢の大切さを改めて思い知らされました。

病気療養中という真っ暗やみみたいな世界で患者さんのニヤリとかフフフとかそういう小さなことって光のようなものだと思うのです。些細なことでも笑ったこと笑えたことは両手で掬い上げて大切に持っておきたいのです。患者さんと関わるときどんなことで笑ったり喜ぶ人か知らないのよ。だいたい皆さん辛くて苦しいから病院にいるので。

だからふとした瞬間のニヤリとかフフフが光で明るくてやさしくて嬉しくてちょっと泣きたくなってしまうのです。ゲラゲラ笑わすことなんてお笑い芸人じゃないから滅多にできないし患者さんにもゲラゲラ笑う元気なんかない。見つめあってにらめっこしてフフフとか、いいじゃない。患者さんのご家族がきたとき「○○さんさっきこんなこと言って笑ってましたよ」とか言うとご家族もにっこりしてフフフと笑ってくれる。すごいよね、ゲラゲラじゃなくてフフフの力って。

 

もうひとつ漫画を紹介するなら手塚治虫先生のブラックジャックですね。これを読まなければ今の私はないくらい影響された漫画です。ずいぶん古い医療現場の描写ではありますが命と向き合う上で読んでみてもいいかもしれません。

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患者さんのために、と正義感に燃えるのもひとつですが本間先生のこの言葉は常に頭に置いておいたほうがいいと思っています。正義感というのはいつだって疑ってかかったほうがいいです。

 

以上さかもツインねねのおすすめ闘病漫画たちでした。またおすすめ見つけたら追加します。それではみなさまごきげんよう。愛をこめて。