ここから先は私のペースで失礼いたします

さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

金曜日の夜にいつもと違うシャワーを浴びて

 1週間お疲れ様とか明日と明後日何しようというワクワクした気持ちになる金曜日の夜は好き。土曜日の朝も日曜日の昼もこんな気持ちにはさせない。金曜日の夜だけが特別なのだ。

 

 朝はそんなに好きじゃない。寝ることが好きなのに眠りに終わりをもたらすなんて。月曜日の朝は殺し屋の機嫌の悪いときよりも鋭い目付きで出勤する。

 夜はこれから眠れる喜びと、眠る時間を削って好きなことをしていい喜びがある。人気のなくなった深夜の街を散歩しながら月を見ていつもいる野良猫を気のすむまで撫でてまるで世界に私ひとりという感覚を味わって神様の気分だ。足取りは軽くたまに踊りたくなる。

 

 金曜日の夜。

疲れて眠ってしまう日もある。先週は元気でいてもたってもいられず夕御飯をかっ込み、鞄にカメラを詰め込んでひとりラブホテルに行った。

 少しだけ人通りの増えた街の夜のネオンに惹き付けられホテルに行ってフロントパネルで好きな部屋を選ぶ。

 自分だけの空間。

写真を撮ったり横になってゴロゴロした。2時間だけの私の城。ちょっとゴージャスでレトロで私の知らない時代の面影を遺すホテル。シャワーを浴びて気分はすっかりまっさらになった。

 

 自宅ではない場所でシャワーを浴びるのって楽しいな。銭湯ももちろんいいけど誰もいないラブホテルの浴室ってなんだかいい。この気持ちは多分行ったら分かると思う。贅沢のようなご褒美のような。しうだ、今度はアイスなんか買っていったらどうだろう。これから暑くなるしガンガンクーラー効かせた部屋で布団をかけてアイス食べてみたいな。そんな遊びのひとつやふたつは持っておいたほうがいい。

 

 仕事のことなんかすっかり頭から抜けて、疲れも嫌なこともなんにもなくなってしまった。ちょっと辛いなと思ったらきっとまたラブホテルへ行くだろう。

 

 デートとやらもしてみたい、そうね、金曜日の夜仕事終わりでおしゃれな喫茶店でコーヒーを飲んでホテルに行くのも楽しいだろうな。私はつくづく男運のない女のようで見知る男がなぜか地方にとばされる。だからデートするのはいつだって片道3時間以上の距離があって、金曜日の夜に新幹線に飛び乗って夜着く頃にはもうへとへとで夜を楽しむどころではなかった。だからそういうのは憧れる。

 

 金曜日の夜にいつもと違うシャワーを浴びて。

それは儀式のようなものでもある。

ひとりでも気のおけぬ人とでも銭湯でもサウナでも。

身を清めて心を清めて。静かな金曜日の夜を私のものにする。

次の金曜日の夜は何をしよう。あ、土曜日も仕事だったか。じゃあその次の金曜日の夜。私はどんな気持ちで何をするか。いまから楽しみなのである。


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