朝起きると薄ら曇の空だった。どんよりとはまた違う、水曜どうでしょうでノルウェーあたりを走っていた時期にやっていたフィヨルドの恋人のときのような色で北国に来たという実感が湧いてきた。
朝食会場に塩辛があったのでそれでもりもりご飯を食べ支度する。テレビをつけるとミスターがサンマ漁について語っていた。落ち着いた番組に落ち着いた雰囲気で話す姿を見て時の流れと懐かしさを感じた。初恋の人な再開したような気分である。
外に出ると白んだ空から少し晴れ間も見えてきた。2日目スタートである。
〚那部さんと再会〛
昨日那部さんが宿泊したラブホに到着。昨日は真っ暗で分からなかったホテルの外観もはっきり見え凝った造りを見て来てよかったなと思う。
朝の支度を終えた那部さんと合流し、3つあるうちのお目当ての部屋が空いていたのでそちらにチェックイン。AM9:00 朝っぱらからラブホである。
夜のラブホもいいのだけど日中のラブホもいい。時間の経過とともに色を変える姿を見れば良さがわかると思う。
〚赤ければ赤いほどいい〛
入室すると全体的に赤い部屋で予想以上の良さに惚れ惚れしてしまった。
窓を開けると
広大な田園風景が広がっており空気がおいしかった。壁一枚隔ててきらびやかな赤い世界にいるのが不思議になる。
統一感のある色の使い方がとても良くこの部屋が気に入ってしまった。
浴室まで赤い。
赤ければ赤いほど、いいよなぁ〜なんてニヤニヤしていた。雪国の白んだ世界にこの赤はあまりにも情熱的で美しい。
花王のお月さま発見。
ベッド横のクーラー(現在は使えないようで、別にエアコンがある)や
ストーブなど
昭和生まれの私でも見たことのないものがあり、形として残っている。博物館に来たみたいと言ったら言い過ぎかもしれないけど仰々しく残しているものではなく当たり前の暮らしの名残がこそっとあるのが感傷的にさせる。
退室前にフロントに電話してこのホテルに来られてよかった、素敵な部屋だった、と話すと物腰の柔らかい御婦人が「あら〜古いだけでなんもなくて」と謙遜しながらも親切に話してくれ、何もない土地をずっと走ってきたから人の温もりに触れることが普段の何十倍も温かさを増して感じられて帰宅した今でもあの電話のやりとりを思い出すと嬉しい気持ちになる。
人にやさしく出来なくなったらまたここに来たい。人の優しさが際立つのも北国のシンとした空気感のせいだろう。
〚看板をたよりに〛
1度そのホテルを去り、昨日外観だけ見たホテルへ向かう、その前にお昼ご飯を食べに行こう。辺りに本当になにもないのでわざわざ探して行かないと食事する場所にたどり着けないのである。
広大な墓地ゾーンを再び通り、死後自分の遺影をどうするかの話を那部さんとした。
ラブホでキャイキャイしてる写真がいいよね、なんてふざけて話したけど身内に見られるとまぁまぁマズいので私は猫を抱っこしてる写真がいいなと思った。自分のフォーマルな写真がない独り身というのは結構困る問題だと思う。みんなどうしているのだろうか。
そんなことを話していると、ラブホらしき看板が見えてきた。
「あっ!!」
事前リサーチで出てこなかったラブホの名前。廃業しても看板だけ残っているということは珍しいことではない。
「戻ろう!」
車内は緊張感と興奮で異様な空気になった。
通り過ぎてしまったためUターンしこの看板から2㌔を慎重に進む。助手席で那部さんがスマホ検索をかける。
2㌔進んだところには特に何もない。民家にしては三角屋根が妙な作りの建物がありもしかしたらここだったのかもしれないね、という結論に至った。
来た道を戻る。こうやって看板を頼りにラブホを探しに行くのも楽しいなと思った。
〚ランチタイム〛
寄り道をしながらもお目当てのスープカレー屋に到着。この旅で1番北海道らしい食事である。
揚げた野菜とチキンがとても美味しかった。
駐車場の奥にAコープがあり、旅先でAコープを見つけるとご当地のものだったり新鮮な野菜果物が売っているのでここにもなにかあるかなと期待して入ったらどこかの島の商店くらいのシンプルなラインナップだった。おやつと飲み物を買う。
10kg入の玉ねぎが二重扉の間に売っていてスケールでかいな〜とほのぼのした。
〚いざ行かん〛
そして問題のギリギリやってるかやってないかのホテルへ。
途中看板を見つけて爆笑。昨日は暗くて分からなかったかもね、と。いい看板です。
昼間でも不安になる道のりを来て再会!
車の窓から様子を伺う。
空いている部屋があるので行きます!
…
はい!最高でした!
こちらもチンチラ風の赤い壁で重厚感のある部屋です。
ステンレスの浴槽だ〜!
湯葉より薄いラブホのガウン(本当に薄かった)
予想以上の部屋に出会いテンションは爆上がりです。
退室時もう一つの部屋も料金を払うので入ってもいいですかと伺うといいよとのことだったので入室。
はわはわしちゃう良さなので火サスごっこも。
レンタルDVD?
赤×ステンレス浴槽最高すぎやしませんか。
とにかく空間と色の使い方が秀逸でいい時代をそのまま閉じ込めて令和まで残ってきたホテルだと思います。
枕は猫ちゃんわんちゃん柄。
帰る頃には夜になりかけていて
なかなか来られないような場所の移ろいを見るとどんな思いしてでもまた来たいと思ってしまうのです。
そして夜を走る!
〚人里下りて〛
今回の北海道旅行で海鮮は食べられそうにもないためラーメンだけは食べておきたいと思っていた。
ので!ラーメン餃子!
肝心のラーメンはとり忘れましたが!
旅先のラーメンは正義。
帰り、「浅草に行ってきてお客さんにお土産配ってるの」と小さなお煎餅をいただく。ここまでくると東京がまるて遠くに感じられ特別なものをいただいた気分になった。
近くにSEIYUでもJASCOでもない、SAIJYOがあった。何なんだろう。営業時間に来ていたら入ってみたかった。
〚そしてまたそれぞれの夜を〛
今日も無事3食食べられた安心感に包まれて那部さんはラブホ、私はビジホに泊まる。
セイコーマートに寄って買い物をし、那部さんが泊まる部屋をちらっと拝見。
いい夜になりそうです。
ビジホに戻り、夜の街を少し歩く。
いい街並み。
ビジホのコインランドリーで洗濯を回している間、大浴場でのんびり入浴。風呂上がりに炭酸飲料を飲んで本日終了。
明日は150㌔以上の大移動です。今回の旅で1番の山場。タイトなスケジュールも重なり緊張感に包まれる前日の夜です。果たして無事稚内にたどり着けるのか!続く。
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