ここから先は私のペースで失礼いたします

さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

ディスコルームへようこそ

眩しく光るディスコのネオン。部屋の扉を開けた瞬間突き刺す光に驚いて一度扉を閉めた。一瞬で心奪われる部屋はそうそうない。ここはそんな部屋。興奮で震える手て扉を開けて息を呑みながら入室した。

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回るベッドにミラーボール、ルーレットのような天井装飾と鏡。
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改定される前の風景法で可能な限りの鏡を使い込んだお部屋はムードと煌めきとワクワクさを詰め込んでいる。

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ミラーボールを回していると数十秒に一度強烈な光が目を刺してくる。
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その眩しさに笑ってしまった。光を浴びたギズモみたいに『まぶちぃ』と言ってしまう。


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写真が撮り切れないほど魅惑的なお部屋。


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回転ベッドも現役で回ります。

スイッチがベッドヘッドではなく、ベッドの縁についているので上がり下りするときにうっかりおしりで踏んでしまいなんか恥ずかしかった。


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ベッドヘッドの照明板は全部きちんと点灯するのだ1つずつゆっくり点灯を確認。全点灯のときの光量ははんぱない。
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お好きな色をお選びください。
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消灯して窓から光を入れれば赤いベッドとおふとんがそれはもう真紅に光るのでどうやっても美しい部屋でございます。
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空調はしっかりしているし、お掃除も丁寧なので過ごしやすいホテル。カラオケもあるし、ウォーターサーバーもあるし親切ですね。
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アメニティも揃ってます。
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なぜかお手洗いの仕切りがカーテンですが。
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ちょっとした病院感がある笑
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お風呂場は赤いです。
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壁の模様が強い!!
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もう鏡が多すぎて本来あってはいけない映り込みを諦めましたわ…
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このポーズ相当体幹強くないとできないわよね。
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お風呂場とベッドルームは若干透けるタイプです。


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個性のあるラブホに来たときのこの高揚感はたまりませんね。また行きたくなるホテルでした。

https://x.com/sakamotwin/status/1808749083672338780?t=4BnSpVT8eNXz1-PQIXhf9A&s=19

蘇我チャーフィールド

一年前の今日、突然現れた茶トラの野良猫?迷い猫?を保護した。

外に慣れていなそうで人を見るとかまってと寄ってくる。どう言うわけか走るバイクに向かって動き出したり車が来ても逃げたりしない。

そんな様子を見てこの猫は外にいちゃ駄目なタイプと感じねねが抱っこをして家に連れ帰った。意外とすうっと捕まったのだった。

 

家に帰り猫を洗いゆんゆん丸とつきちゃんとは別の部屋へ隔離。

部屋に閉じ込められた茶トラの猫。扉を開けて撫でたら嬉しすぎてよだれを垂らしながらブルルルルルゴロゴロ~と転がっていた。

捕獲後動物病院に連れて行くと4キロの雄猫、推定5〜10歳と言う事だった。

迷子なら飼い主へ返す、飼い主が見つからないなら家で飼うと決めたが飼い主が見つからず現在はさかもツインハウスの猫として茶トラ猫は過ごしている。

猫が一匹増えた!とさかもツインはてんやわんや。猫も誰か知らないやつがいると環境の変化にストレスを感じていたと思う。

俺は一番かわいい猫ですよね?の顔をするゆんゆん丸。

茶トラを追いかけて怒られたつきちゃん。

屋外の生活が過酷だったのか家に来てゴロゴロする茶トラ猫。

茶トラ猫、名前がサン(3番目の猫の意)かチャと呼ばれていた。が、段々チャッツとかトラちゃんとか色んな名前で呼ばれ出して今は蘇我チャーフィールドが正式名称として落ち着いてる。呼ぶ時はフルネームではなくチャー、チャーフィーと呼ばれてる。

外に自由に出ていたことがあるのか洗濯物を干すために窓を開けるとサーーーと脱走することが多くその度にシャンプーをしている。

ニンゲンはなぜここに来てわしを撫でないのか?と言う顔をしている蘇我チャーフィールド。

ベッドで一緒に寝たり撫でてくれーと甘えてきたり脱走癖がある事以外はとても可愛い猫なのだ。

いや、早朝に寝てるニンゲンの髪の毛を噛みしゃぶったり、顔特に目元をチョイチョイつついたり、耳にマズルを押し込んできたり、尻を押し付けてきたりやめてくれーと思う行為を沢山してくるな。可愛いのだがそれはちょっと自粛してくれるかい?

やめられませんよねと言う顔のチャーフィールド。

3ニャンズはそこまで仲良くないが共存はしてくれてるのでおのおの気ままに暮らしていけるのがいいねと思って過ごしている。

さかもツインは未婚なのでこどもの日とかそういうイベントとは無縁だが可愛い猫たちのお家記念日は特別な気持ちになるのだった。

 

遺書を読む

敬愛する写真家の曽我灯さんの写真集『遺書』が完成したとのことで早速手に取らせてもらった。


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https://x.com/gaso_0131/status/1799773157769072648?t=S_hUrmSrJ-tCPgmptaOJjA&s=19 

 

人の遺書というものは今まで読んだことがない。まして多少なりとも人となりを知る人の遺書を読む日が来るなんて思ったこともなかった。

手に取る日の数日前から遺書を読むことを怖く思う瞬間も出てきた。これを読んでしまったら曽我さんがいなくなることを許容してしまうようで。

いや、もしものときのために残しておく言葉は必要なんだけども、それを書いてしまったら現実になるのではという死の恐怖から目を背けているだけなんだよな。本当は誰しもが死への準備をしておかなければならない。明日を今日と同じように迎えられる確約なんてないし。

遺書を取りに行く電車の中で深呼吸を繰り返した。深く深く、息をするのを忘れてしまうような緊張がずっと走っている。

 

とある和室のラブホで遺書手にしを読んだ。
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写真集をパラパラとめくる。

どの写真も表情豊かで話し声や息遣いが聞こえてきそう。この場にいなくとも音や熱、匂いが伝わる写真たち。ページをめくるたびに目を細めた。曽我さんの写真はいいな、素敵だなって。

 

そして直筆の遺書を読み始めた。

心の内にここまで触れていいのか、読むのを少し躊躇いながらも読み進めずにはいられなかった。

心臓の後ろにある僅かな隙間に心があるとしたらそこに真っ黒な悲しみを背骨に向かってだらりと塗り込まれていくような感覚だった。

それがとても苦しくて涙よりも先に嗚咽が出てしまう。息をしないとのみ込まれてしまう。

この遺書だけで曽我さんのこと全てわかったわけでない、わかったような言い方もしたくない。曽我さんの心は曽我さんだけの心なのだから私なぞが陳腐な言葉で語るべきでないのだが、あなたの言う灰色の世界というものを少しだけ見た気がします。

 

それはたいそう暗かったでしょうに、、と遺書を読み終えた。そしてまた写真集をペラペラとめくる。

言葉の重さが写真の『生』を引き立てる。こんなに生きた時間に囲まれているのにどこか寂しさを感じさせる。

 

人の想いはその人だけのもの、という忘れがちだけど大切なことをずっしりと受け止めた。

読み終えたあと、明日には曽我さんがいなくなってしまうのではという漠然とした不安と喪失感に襲われる。掴んでいないと消えてしまいそうな人を掴むのはこちらのエゴであるということをわかってはいても今だけは掴ませてと思った。

自分の不安解消のために声をかけたり手を取る愚かさよ。私の中にあるそれはなんてケチでつまらないものなのか。そうやって自分の無力さを思い知る。

その人自身を尊重するなら取るべき行動を考えねばならぬ。

本当に本当に考えさせられる一冊だった。ここ数年で見た作品の中で1番心打たれたと思う。

 

 

帰りに実家に寄り、故人の日記を少し読んだ。

当たり前の日常を慈しむ言葉が並ぶ。亡き後はこうやって残されたものに縋るしかない。喪失の恐ろしさを知っているからこそ次の喪失が怖いのだ。

この日常から何一つ失いたくないよ今だけはそんなわがままも聞いてほしい。けどそれは無理なので子どものようにうえ〜んと声を上げて泣くことしかできない。

 

遺書を読んでから毎日泣いている。

多分明日からは大丈夫だろう。あなたに安らかな眠りが訪れるまでこの遺書は私の心の中にずっとおいておきます。

 

 

 

曽我灯『遺書』

https://sogatomoru.base.shop/?s=09

いつまでたっても忘れたくないよこの日のことは

◯自分にとって好きな場所、大切な場所というのはいくつかあって、それはできれば敬愛する人と共有したいと思っている。

 

青森県にあるホテルナポレオンは初めて会うフォロワーさん(ラブホテル写真家那部亜弓さん)と一緒に行ってお目当ての部屋に入れたときが原体験で、あの感動と異様な高まりは忘れられない。

 

その後妹、かぽさんかんさきさんご夫妻と再訪しているが、皆目をまんまるにして「すごいホテルだ…」と驚かれていた。初めて訪問したときの追体験をしているようで、ナポレオンに行ってみたい人とナポレオンに行き、ナポレオン初対面の瞬間を共有するのは喜ばしい。

ホテルナポレオン↓


ホテル ナポレオン

 

とはいえアクセスはそこまで良くない。八戸駅から車で30分ほど。レンタカーが必須かなと思われる。何回か行っているのでだいぶハードルは下がったが、行くのはそれなりの気合を入れないと難しい場所である。一緒に行きましょと誘うとき「遠いですが大丈夫でしょうか?」と断りを入れるようにしている。

 

 

◯年始に敬愛する写真家さんの個展があった。わ!展示だ展示だ!絶対行くと意気込んで見に行った。

https://x.com/gaso_0131?t=IHkT6RsRuyvC7aTPkvticw&s=09

曽我灯さん。

ずいぶん前から活動をSNSで拝見しており、生々しいというか空気のような場所から写真を撮るすごい人と思っていたのでいつかお会いして写真をお願いしてみたかった。

が、SNSのメッセージで「写真撮ってくだせぇ!よろしゅうおたのもうします」って急に言うのも恥ずかしい。なんて書けばいいのかわからない。それができなくてずっときてしまったのでもしお会いできたら直接撮影を依頼するぞと、まるで先輩に告白する女子中学生みたいなテンションで出かけた。

 

◯展示会場につくとご本人様がいらっしゃる。遠目でもわかる。一旦引きたくなるくらいの緊張をしながらも展示を見た。

どの写真も生きている音が聞こえるような、まるで見ているこちらがモデルさんの恋人のような気分にさせられる親しみの時間を切り取られていた。

うわー、全部好きだよこの写真と思うような写真で素晴らしかった。

 

一通り見たあと、お声をかけてホテルナポレオンのライターをお渡ししたところナポレオンは行ってみたいとのことだった。ふぅん、じゃあ一緒に行きたいなと思ったことがこの旅のきっかけである。

 

◯一言先に断っておくと、私の場合ラブホに行くというのは「ラブホテルという空間を鑑賞し楽しむ」という目的なのでエロはない。誰とラブホに行こうがなんのエロも発生したことがない経歴が確かにある。なので期待した方はすみません。なにもないです。

 

◯色んな段取りがついたところで、出発当日の朝新幹線が止まった。まあ、30分くらいで動くだろと思っていたら午前中いっぱい運休とのことだった。

とほほ〜という感じである。この日は昼頃八戸について海に行き夕刻曽我さんと合流してナポレオンではないホテルに行く予定だった。

予定は全部変更となり新幹線が動くのをじっと待った。幸い午後には動き始めなんとか夕方には八戸についたので、迫る夜の気配に追われながら海へ向かった。

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八戸の海はいい。人気が無いのがまたいい。青から紺へ色を変えていく中写真を撮って宿へ向かった。

 

曽我さんも無事に八戸につき、翌日ナポレオンに行きましょうということで初日のトラブル旅程をなんとか終えた。

 


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本八戸駅で待ち合わせをしてナポレオンへ向かう。昨日のことなどをポツポツと話して案内看板を通り過ぎナポレオンに到着した。

幸いお目当ての部屋が空いており、「どこから入りますか?」とテンション高めに話し合う。

赤い部屋、とのことでルイ13世からの入室となった。

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さぁさ、どうぞどうぞと先を譲り合っての入室。

部屋は照明を落しており暗い。先がどうなっているかわからない廊下をゆっくり進むと

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我々の宮殿がお目見えですわよ!

何度見てもいい、何度来てもいい素敵なお部屋である。赤の迫力、カーテンの優雅さ、丸ベッドの荘厳さ、もうため息しか出てこない。

曽我さんも驚かれていてその顔を見られたらこの旅の目的はもう達成されたようなものである。ひとりでこの荘厳さを受け入れるのもったいない。

独り占めするというのもいいのかもしれないけど。

 

写真を撮りながら部屋の感想を話し、この部屋の好きなポイントをじっくり見つめた。f:id:sakamotwin:20240428191649j:image

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↑曽我さんが撮ってくれたルイ13世の部屋を満喫する私

 

趣味の火曜サスペンスごっこの写真を撮っている間、曽我さんはカラオケをしていたのだが、この空間で聞くカラオケはとても良かった。旅先でスナックからもてれくる昭和歌謡曲を聞くときのような旅情感を味わえた。音楽があるというのはいいものである。部屋に命が宿ったみたい。新たな気づきを得られ心地よい歌声を聞きながらベッドに横たわって死んだふりを続けた。

 

 

◯一通り部屋を満喫して、ナポレオンの部屋に移動する。

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いつ来ても私の好きな空間だ。真ん中にお風呂がありベッドルームは端にある。浴室が主役のお部屋だ。ガラス窓で透けるお風呂はなんともなんとも。雪国の人の心の内の燃えあがるエロスだ。。
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赤い壁と青のバスタブの対比がたまらない。こんなカラーリングするセンス、何を食べたら育まれるのか教えてほしい。

 

◯馬車をモチーフにしたベッドも素晴らしく、多分これは布団の差し色が赤かったということで絶叫しているところだが、この写真には相当笑かされた。
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曽我灯(敬称略)…末恐ろしい男よ…。

こんなアホみたいな瞬間よくぞ切り取った。正直こんな瞬間を写真に撮る人などいるとすれば「ねねの変な写真撮ってやろ〜」という妹くらいしかいない。腹の中から一緒のやつと同じ距離感感覚でこれを切り取るとは。

もう嬉しくなっちゃいましたね。ラブホに行って楽しい瞬間をそのまま真空パックして思い出をいつでも新鮮に振り返られるみたいな。何を喋ったか鮮明に思い出せるよ。あの時間が確かにあったという記録は大切。

こうやって楽しんでるんだという見方もできるし、こんなに楽しんだなら明日からまた頑張れると思えるし。撮ってもらった写真全てが生きる糧です。

 

 

◯時間も夕方にさしかかりナポレオンは退出。また来ることを誓う。

曽我さんが「ルイ13世のお部屋は、本来の目的で使うべきお部屋だと思います」と言った。同感である。そのことがずっと頭から離れなくてこのブログを書いている今ですら「本来の目的」をどうしたら達成できるか考えている。が、恋愛というものがもう分からなくなってしまって久しい。まずは恋愛から、という話なのだが難しすぎるのでずっとなんとかなってくれと漠然と願っている。

 

近くの直売所で軽食を買い、もう1軒ラブホへ向かう。

 

今回の旅のメインテーマはナポレオン。

裏テーマはこちらのホテル。ひっそりと営業されているようなので名前は出さないでおく。

以前行ったら女性同士はダメと断られたことがあり、何としても入りたいなら男性と行く必要があった。曽我さんの了承もありこちらのホテルに行く。なんとお目当てのお部屋が空いており半狂乱になりながら車庫入れ、入室。


あ…ぁ
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文化〜ッッッ!文化でございます!昭和の、昭和のエロスとロマンスでございますぅっっ。ありがとうございます。来て良かった…ありがとうありがとう。もう思考回路は歓喜の道しか残されてない。

 

この世には私の知らない世界がまだまだたくさんあってそれを知ったり体感したりすることの刺激はたまらなく心地良い。
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曽我さんがナチュラルに入れた100円で何が起きたかは秘密だ。これを知らないで人生を終えなくてよかった。言い過ぎじゃない、本当にそう思ってる。

 

ちょっとした屋外エリアのある部屋なので外でパンを食べながらここに来られたことを噛みしめる。帰りたくないな。ずっとここで遊んだりゴロゴロしていたいよ。

 

◯とはいえレンタカーの返却時刻も迫り帰る時間となった。帰り道八戸駅で迷いバタバタしながらの解散となった。曽我さんは旅を続けるとのことで駅にすっと消えていった。旅が似合うスナフキンみたいな人である。行く先々で空気のように溶け込み風のようにいなくなってしまった。

 

子どもの頃ムーミンたちが寂しがる中去っていくスナフキンを非情な男だと思って見ていたが、大人になるとスナフキンの気持ちもわからなくはない。旅がなければ生きてはいけない。

 

 

◯私自身かなり偏屈で自己中心的、容赦なく人を振り回すことがあるので道中曽我さん疲れなかったかしらと少し心配になった。でも年に1度くらいはまたこうしてナポレオンに行きたいと思う。また誘ってみよう。

 

人とラブホテルに行く楽しみを覚えてしまった。ひとりで行くのも楽しいのだが、共有することに楽しさを覚えてしまうとは欲張りなものだ。一緒に行ってくれる人がいるありがたさを噛みしめる。いつまでたっても忘れたくないよこの日のことは。

 

 

 

見送る日

「ねねさん、報告があります!」

と食堂で昼休みをとる職場の大好きなおばちゃんに声をかけたられた。この一言で全てを察してしまった。退職の報告である。

いつかこんな日が来るとは思っていたが思ったより早かった。私は地獄の底に叩きつけられこれからどう生きていこうかと天を仰ぐように食堂の天井を見つめた。

 

 

おばちゃんとの出会いは9年前。増床によるスタッフ募集をかけていた病院に入職した際、私より数ヶ月早く入職していたので仕事のことを色々と教えてもらった。

院内は新人さんと古参のスタッフ、新入院患者さんで混沌としていた。毎日毎日お祭り騒ぎのようにバタバタしており、右も左もわからない状態で仕事をしなくてはならないのはキツかった。古参スタッフは毎日ピリピリしていて、職場に打ち解けるとかそういう雰囲気ではなかった。野戦病院みたいな状況でよく大きな事故もなくやってこれたと思う。正直入職してからの数ヶ月はバタバタしていてどう働いていたか記憶にない。

新入職の人があとからどんどん入ってきたが、キツさて半数近くが1ヶ月ほどで辞めていった。

 

数ヶ月ほどして病棟の忙しさも落ち着き、おばちゃんや入職同期の人たちと話すことも増え、周りの人の仕事ぶりを見る余裕もでてきた。

おばちゃんはとても丁寧に仕事をしていてとにかく優しかった。誰にでも優しかった。

患者さん一人ひとりに「おはよう」と声をかけ耳が遠い人には耳元でしっかりと話す。当たり前だと思うことも何人も患者さんを受け持ち時間に追われると難しくなる。そんな中声のトーンやテンポが心地良い話し方でずれた枕や布団を直しバイタルをとっていく。看護師としてのあるべき姿を見せつけられた。仕事が早いとか点滴がうまいとかそういうことじゃない、人と向き合う誠実さが桁外れだった。おばちゃんはそういうところがいつだって正しかった。

 

なので一緒の勤務の日は心穏やかだった。

私は偏屈で気難しく厳しいところがある。そんな人間の心を解くような明るさを持っていて、こちらまで優しい善人になれた気がするのだ。

できる仕事も増えて余力があれば色んなケアに2人で当たった。

散髪、車椅子でお散歩、摂食チャレンジなど。(もちろん医師の許可や家族の了承のある範囲内で)

患者さんがいい方向に行くのがとにかく楽しかった。

気難しい患者さんにも、おばちゃんか私がいる日は「ホッとするのよ、ちゃんとやってくれるから」と言われることがあり嬉しかった。おばちゃんを褒められたこと、おばちゃんの仕事ぶりを少しは引き継げていることが誇らしかった。

 

9年間辞めようと思ったことはたくさんある。だけどおばちゃんがいる限りは絶対辞めないと決めていた。この人と一緒に働けるならそれ以上の条件はないと思っていた。いい意味で私を引っ張ってくれて本当に感謝している。たくさんのことをその姿勢から学ばせてもらった。

 

 

コロナ禍に入り、時代が変わった。

労働者はみんな疲れている。現場の声を聞かない管理職、声の大きい人の声しか通らない理不尽さ。真面目に働く人がバカを見るようになってきてしまった。

まともな人からどんどん退職し、常に新人さんが入っては辞め入っては辞めを繰り返している。自分の業務をしながら新人指導をして正論を言っても聞いてもらえずベテランさんたちはみんな疲れてしまっている。まともな人が辞めるということは変な人ばかり残っているということだ。ここは大病院と違いスタッフが少ない。組織化していれば、然るべき対応をしてくれる部分も全部なあなあになっている。

 

正論が通らない、要望を聞いてもらえない、改善策がなく同じようなミスの尻拭いをしている。いがみ合うスタッフたち。精神を病んで休職していたスタッフは退職を余儀なくされた。

 

たくさんのまともなスタッフを「ここは辞めて正解です」と見送ってきた。まさかおばちゃんのこともそう見送る日が来るとは。

 

 

 

おばちゃんの退職の理由を聞くと家庭のことなど、表向きの理由を教えてくれた。そのあと小さな声で「もう、疲れちゃった」とこぼした。

「わかります…そうですよね」

とだけ答えた。だってわかるのだもの。日々の積み重ねよね。それ以上は聞かなかった。

 

 

きっと大丈夫、今生の別れではないし、今までだってみんなを見送ってきたじゃない。もっと悲しいこともたくさん経験してきたし、もう泣くほどの感情も残ってない。おばちゃんのことだって笑って見送れると思っていた。退職の話を聞いてからある程度の覚悟を決めた。

 

 

お別れの日がわかり、伊勢丹にお世話になったお礼の菓子折りを買いに行った。お菓子売り場について、たくさんの人がお菓子を選んでいる様子を見た時、この別れがいよいよ現実になるんだと頭の中が真っ白になった。

神様、これ以上なにも望まない、欲しいものも求めない、だからおばちゃんだけはさらって行かないで私から奪わないでとお菓子売り場の真ん中で叫びたかった。

 

自分の心を保つためにケーキを買ってはみたけどもなにか効果があったとは思えない。

とりあえず、この9年間の感謝と愛を込められそうな素敵な菓子折りをと探した。9年間頑張ったなぁっておばちゃんが思えるように、いい門出を祝えるように、ピンク色の箱にリボンがかかる菓子折りを選んだ。

 

サヨナラの日、ちょうど食堂でおばちゃんと一緒になり、挨拶をして隣のテーブルで昼食をとった。あぁ、これが最後なんだなと、いつもなら雑談をしながら時間を過ごすのだが、無言になってしまった。

楽しかったことだけが思い出される。じゃあまたあとでと午後の持ち場に戻り、終業後ロッカーで菓子折りを渡して着替えをする。

 

「本当にお世話になりまして…」と口にしたらわんわん泣いてしまった。

「そんなに泣かれたら私も泣いちゃうじゃない」と目を真っ赤にするおばちゃん。

 

ロッカーで私の着替えを待って一緒に退勤してくれたおばちゃん。

コートの襟を直してくれたり、スカートを巻き込んで履いたタイツを直してくれたりなんだかんだで世話を焼いてくれていて、いつもお姉さんのように見守ってくれていたので、

「お姉さんのように良くしてもらってありがとうございました」と口にしたらまたさらに泣けてくる。

 

「今生の別れじゃないし、またいつでも会えるからお互い体には気を付けて頑張ろうね、でも、こうやって会えなくなるのは…淋しいね」

と抱き合った時職場でこんな泣く人いんのかというほど声を上げておばちゃんにしがみついた。

おばちゃんのずっしりとした重みは9年間の重み。私だけが大切にしていると思っていた時間は、おばちゃんにとっても大切なものだったようだ。そういう時間を過ごせてきたことが何よりも宝である。

 

「電車に乗る人がそんなに泣いちゃだめよ」って笑って見送ってくれた。

「自転車で帰る人もそんなに泣いちゃ危ないですよ」って手をふる。

 

 

大切な時間はいつだって突然あっさり終わる。終わらないでほしい時間も終わってほしい時間も平等に進む。恋愛ではないけども、運命の人がいるのならば私にとっては間違いなくおばちゃんである。そんな人に出会えてよかった。

 

おばちゃんの新境地にいずれ移るつもりでこの一年は働こうと思う。頑張ってって見送ってくれたのだから。清く正しく優しく美しく、この9年間を無駄にしない働き方をすることがきっとおばちゃんから受けた恩を返すことに繋がると思う。

 

師匠のような人でした。病院に名もなき英雄がいるとしたらあなたですよ。私を育ててくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

フォレストイン 302号室に潜入

のどかな春の日、桜が散りゆくさまを横目にラブホテルに車を走らせてていた。春風の入る昭和ラブホでゆっくりサンドイッチでも食べようというラブホピクニックが目的である。

浮かれているとこれは一般車両が入っていい道なのか不安になるハードめな道が現れた。恐る恐る車を進める。

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フォレストイン (フォレストイン)|茨城県 水戸市|ハッピーホテル

対向車が来なくてよかった。ここですれ違いなどしようものなら運転スキル弱々な私は雑木林に突っ込んでJAFを呼ぶ羽目になっていただろう。

 

ビル形式のラブホであるが、2階客室はガレージ式(お部屋専用の駐車場に車を停めて2階の客室へ上がっていくタイプ)で、2階要ガレージを通過すると3階客室用駐車場があり、パネルでお部屋を選ぶシステムである。


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他に車が停まっていなくて、このラブホに今ひとりだけ?という…ね。
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エレベーターで3階に上がる。
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暗い。ビジホのようなワンルームマンションのような廊下だ。

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扉を開けると一変、ピンクのメルヘンワールドになる。やや薄暗いが。
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お部屋は全体的にピンク。圧倒的なピンクである。
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浴室との壁はヴィーナス誕生ガラスだ。透けないように板張りしてある。
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ベッドヘッドのドームがかわいい。もこもことした質感。
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鏡になっているのもレトロでいい。

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照明の下に鏡があると反射してきれいよね。f:id:sakamotwin:20240418110440j:image

天井だってゴージャスよ!

一通り写真を撮ったらベッドパネルの照明スイッチをあれこれ触ってみるのですが、

パチ
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ギラッッッ


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えっ!

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ギラギラ〜ッッッ!

ラブホのミラーボールは風情がありますね。桜散る寂しさはラブホのミラーボールが慰めてくれる。この輝きは永遠だよと言わんばかりギラギラしている。


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光が溢れ出すもんですからちょっと離れますわよ。


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配膳口だ。

 

スリッパない部屋だなと思っていたら入室扉開けて左側にありました。
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お風呂はピンク×水色の乙女配色。
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電気のスイッチどこかなと探していたらこのツマミを回すやつでした。
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洗面所はシンプル。

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アメニティもシンプルです。
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お手洗いもシンプル。
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使いやすさがあります。

 

まだギラギラしてる!
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じゃあここでサンドイッチでも食べますか。

モクモク…。

ギラついた空間でシンプルに食べるサンドイッチは美味しいですね。

 

今度は那部さんと来たいな。
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お会計は部屋を出たところにある自動精算機で。
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そしてまた来た道を戻り帰路につく。
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ラブホピクニック、楽しいのでおすすめです。

 

【お知らせその①】

4/27 11:00〜16:00

ベルサール秋葉原で開催されるおもしろ同人誌バザールにラブホテル写真家の那部亜弓さんとレトロホテル寫眞録というサークルで出店します。


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https://x.com/aisiyon/status/1779373011277435024?t=rPREkk9gvIz5QSJqKxdvYg&s=09

ラブホで撮った火曜サスペンスごっこの写真集なと持っていきます。お時間ある方はぜひ遊びに来てください。

 

【お知らせその②】

4/24〜29 大阪ギャラリー方舟さまにて開催される

昭和展に火曜サスペンスごっこの写真を数点出展させていただきます。

次回展示 「昭和展」 2024.4.24水〜29祝月 14-20時 最終日は17時まで 昭和をテーマに作家さんたちの想�... | Instagram

4/29夕刻ギャラリーにお邪魔する予定です。よろしくお願いします🙇

 

ホテルロンシャン313号室に潜入

2024年3/16、北陸新幹線金沢敦賀間が開業した。

2015年に新幹線が金沢まで行くようになりすごく便利になったと思ったものだ。遠い昔に金沢まで行ったとき新幹線と特急を乗り継ぎ4時間近くかかって北陸はえらく遠い場所だなと思っていたので新幹線が通るようになることは旅の選択肢が増えるので嬉しいことである。

 

たまたま富山に出かけることになり、記念に電光表示板の写真を撮る。
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周りの乗客も写真を撮っておりおめでたい雰囲気が漂う中富山に向かった。
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新幹線はほぼ満席で賑やかだった。年始に震災があり色々と考えさせられることばかりだった。こういうときは綺麗事や理想論を語らず現地でお金を使うのが1番だろう。口を出すな手を出せ動けというのはいつも頭に置いておきたい。

 

今回の同行はかぽさん、かんさきさん。ラブホ写真を撮に行く心強い仲間である。朝待ち合わせてロンシャンに行く前に日本海もちらっと散策。
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どんよりとした海が日本海の厳しさを物語っており遠くにうっすら見える立山連峰はただただかっこいい。ダイナミックな景色を楽しみいざロンシャンへ。

 

ガレージタイプのホテルなので車で入るとお部屋パネルがある。ドライブスルーのメニュー表みたいに全部屋見られるので「この部屋行きたい」とワクワクしながら部屋を選ぶ。

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313号室ディ◯ニーランドのお部屋。
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ぱっと見た感じコーヒーカップらしきものがある。これは楽しみ。

駐車場に車を停め3階のお部屋まで階段を登っていく。

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部屋番号がチカチカ点滅しておりいざ入室。
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来たぜ俺達の◯ィズニーランド!!
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コーヒーカップが本当にありました。回りはしませんがこんなの座ってキャッキャするしかないですね。大人だってはしゃぎたいもの!もう何年も乗ってないけどコーヒーカップってこんな感じだったなぁというのをしみじみ感じた。中学生か高校生のの初デート気分を味わえそう。甘酸っぱいわね。

実際座ってみるとまっ平らな椅子や真ん中の回し手のポールに足が当たる感じとか完全にコーヒーカップだった。

 

コーヒーカップエリアには電子レンジなどもあり、ここで座ってくつろげるようになっている。
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コーヒーカップの奥にガラス窓があるが、こちらスケスケ浴室だ。

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鏡が多めなのでミラーハウスのようなアトラクション(?)ぽくもある。
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洗面所とお手洗いがワンスペースなのでお手洗い使うときは宣告しないとちょっと手洗おっと、と入ったときにお手洗いバッティングしかねないので要注意。
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アメニティ多めの今どきホテルなので水回りは安心して使える。

 

ベッドはシンプルだが見上げるとこちらをガン見するミッ◯ーがいる。

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天井鏡でなく◯ッキーというのがポイント。

いつだって見ていますからねという圧を感じる。

 

ベッドヘッドにあるパネル。
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ロンシャンファイルと料金表。
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電話はキ◯ィちゃん。
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かわいければ🆗です!


お部屋がこれで終わりかと思えば奥に続く部屋がまたある!

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こちらにもくつろぎスペースとしてソファーが!
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天井はもうエレクトリカル・パレードですよ。

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そして両サイドは鏡張り。
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ギラギラしててこれぞ昭和ラブホの醍醐味!という空間。

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淡い恋心をもう一度味わえるようなときめき空間です。

帰りは自動精算機で精算なので入室から退室まで誰にも合わずに利用できるありがたいシステム。
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人目もはばからずはしゃぎたいときはこの部屋をおすすめする。いくつになっても楽しいことには貪欲でいなくちゃね。

 

2024年3月訪問