こんばんは、ねね(姉)です。
最近ニュクスの角灯(作 高浜寛)という漫画を読んだのですが、時代背景やストーリーがぐっとくるねね好みの漫画でしたので紹介したいと思います。
ニュクスの角灯は現在単行本4巻まで、リイド社が運営するトーチというWebサイトで絶賛連載中です。
1878年・長崎……触れた物の未来が見える 不思議な少女と、
先進と享楽の都・パリから やってきた夢の品々を巡る、豊潤なる人間ドラマ。
高浜寛が描く”明治ハイカラ・アンティーク浪漫”
リイド社の単行本って、すごくデザインが凝っていて持っているだけでワクワクするんですよね。
ニュクスの角灯の舞台は長崎の鍛冶屋町、道具屋『蠻』。時代は1878年、明治11年です。
明治11年、与謝野晶子やバカヤロー解散で有名な吉田茂の生まれた年でもあります。
明治維新から富国強兵、文明開化など近代化が一気に進んだ時代。
その時代のワクワク感、せわしさ、人々の生き生きした様子が描かれています。
主人公は美世という内気な女の子。
両親を戦争で亡くした(多分西南戦争)美世が蠻という道具屋で働き始め色々な世界を知り成長していくストーリーです。ページを追うごとに美世の表情や感情が明るく開いていくのが読んでいて楽しくなります。
また美世が着ている着物も派手ではないのですが、当時の若い女性が着ていた中振り袖という袖の長さが絶妙なかわいさがあります。
隣の男性は蠻の店主モモさん。眼鏡を外すと実は…なアレなのでねねはかなり好きですね。ドキドキする。
他にも濃いキャラクターが沢山の現れますが、どのキャラも真っ直ぐでいい人なので読んでいて清々しいです。
ストーリー以上に舞台である当時の長崎や舶来物の繊細な描かれ方が過去オタクにはたまらないところでしょう。
重厚感溢れるキャラの大浦慶、こちらは実在の人物がモデルのようです。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B5%A6%E6%85%B6
大浦慶 - Wikipedia
ストーリー展開でこの人の動向や言動から目は離せません。
実際の人物像としては真の強い女性だったのではないでしょうか。女性実業家の先駆け的存在でしょう。
作中でも出てくるベルビューホテルは実在したホテルです。
OLD PHOTOS of JAPAN: 外国人居留地 1880年代の長崎
↑当時の写真が載っています。
現在はANAクラウンプラザホテル長崎グラバーヒルが建っています。
旧長崎税関下り松派出所(1898年竣工←作中より20年後)
などの歴史的建築物が並び今でも賑わいを見せている地区です。
ちなみにベルビューホテルは出島の方へ移動し現在も営業しています。
美世とモモさんが山手の方へ出かける回があるのですが、山手は歩いてみると坂道が多く息が切れます。
洋館がポツポツと建ち並び異国情緒溢れる場所です。
石畳の階段が膝にくる…。
長崎の気候ならではの樹木や、カラーリングの素敵な門を見ているだけでうっとりしてきます。
中に入れる洋館もあり、当時の暮らしを垣間見ることができます。
東山手は活水女子大学があり創立は1879年なので作中と同じ頃になります。
赤い屋根の校舎はもう少し後に建てられたもののようですが、見応えのある西洋建築です。
蠻のある鍛冶屋町から大浦慶居住跡地が徒歩圏内なので、この辺りを登場人物はよく歩いていたのでしょう。
ちょっと足を伸ばすと川面に写す橋の姿が眼鏡の形で有名な眼鏡橋があります。何回か流されて修復されているので当時とは違う姿だと思われます。
1624年建立の興福寺は朱塗りの山門がフォトジェニックです。
祠の守猫もいて穏やかな時間が流れています。
近くには昭和レトロな饅頭屋や
石畳の坂道が続くので、今何時代だっけ、と妙な感覚になり、通りすぎてきた時間を巻き戻して見ているようです。
長崎と言えば原爆投下は避けられない話でしょう。
原爆投下地点より2キロ範囲は全壊全焼、写真からも無になってしまった様子がわかります。
爆心地の物悲しさ。無為に壊すことはなんて愚かなのか。新しい緑で被われても隠すことのできない爪痕。
鍛冶屋町や大浦天主堂、山手の方は一部被害があったものの全壊全焼は免れており明治~昭和初期の建物が残っているのですね。
リュクスの角灯を読んで、長崎をほっつき歩いた楽しい思い出が甦ってきました。
知っている場所と好きな漫画が合致したときすごくワクワクします。知らない場所を、知らないことを知り、知りたいことを知る。誰に押し付けられるでもなく自分が主体の知るということは楽しいです。
ファンが聖地巡礼する気持ちがよく分かりました。ニュクスの角灯、過去から現在に通じるタイムトラベルもできる漫画なので興味のあるかたはぜひ御一読を、または長崎への旅を、ねねはおすすめいたします。旅に出るきっかけ、知りたいと思うきっかけ、なんでも自分が動こうとするきっかけは何だっていいのです。そうやって楽しむ時間を大切にしていこうと思うのでした。