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さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

干支天使チアラット最終回によせて

私の1番大好きなweb漫画、干支天使チアラットの連載が先日最終回を迎えた。

美少女戦士もののギャグ漫画と言えるだろうか。敬愛する中川ホメオパシー先生の描くダークでキュートなヒロインが姑息な手を使いつつも人の悪意や怨念を浄化しなんかハッピーな感じで敵を倒していく、というストーリーだ。

気になる方はこちらを読んでみてほしい。↓

 https://binb.bricks.pub/contents/ae420da0-f61d-4d7e-8b30-cb97b1c9f645/speed_reader
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 2015年に連載が開始され50話まで更新された。その間に単行本3冊、河崎実監督による実写化、イベントなどファンを楽しませてくれた中川ホメオパシー先生。至れり尽くせりなファンサービスを「尊い尊い」と享受した3年間だった。

中川ホメオパシー先生の存在は愛読していたオモコロでバトル少年カズヤという狂いに狂いまくった漫画を連載していたのでそこで知ることになる。
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基本狂ってて話の展開は読めないギャグ漫画なのだが読んでいるとハッとする言葉が挟まれている。正気と狂喜のはざまで、やらなすぎるよりマシというのは私の中で座右の銘にしたいくらい好きな言葉だ。諦めたくなることもこの言葉を反芻することにより前を向いて進める気がする。ひたすらにただただやるしかないときも人生にはあるのだ。

 

 バトル少年カズヤに収録されている健のポエム手帳のポエムがやばすぎて文化遺産レベルなのでぜひ読んでほしいと思う。私はこのポエムを読んで中川ホメオパシー先生に一生ついていくと決めた。
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バトル少年カズヤと干支天使チアラットの発売記念イベントは闇の終末セミナーとタイトルをうたれ大阪まで遠征することとなった。
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イベントの様子は薬物の依存がshowしてる中年男性のスライドがすべてを物語る。
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 終始笑わされるイベントで後にも先にもあれは奇跡としか言い様のないイベントだったと思っている。

 

干支天使チアラットではかわいい女子が干支をモチーフにした戦士服に変身する。色使いやキャラクターの個性にあわせて干支天使が描かれている。新しい干支天使が登場する度にかわいいかわいいと絶賛していた。特に卯年のチアバニーがかわいすぎる。
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なんか女子の憧れを抽出したようなやつで、でも中川ホメオパシー先生は男子でどこからその乙女心が聖なる泉のように沸いてくるのかと不思議になることがしばしばある。
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大人だからこそこういう漫画は必要だと思う。

何者にも特別な何かにもなれなくて毎日を細々と生きているからこそ干支天使たちが特別な何かになり世界を守ったり変えたり生き生きとしている姿になんとなく背中を押されたり明日も生きるかと笑えるのだ。


かわいい女の子だけじゃない、おっさんを描くのだって得意な中川ホメオパシー先生。
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これは怒り狂った中年男性が中年男性をはったおそうとするシーンなのだが人生で喧嘩とかしたことないような冴えない男が不器用にそれでも全力で立ち向かう姿が滑稽すぎる。

倒したいなら肩じゃないだろう、狙うべき場所も怒りで見えていない。こんなに悔しくて惨めで滑稽な姿を見て何を感じるだろうか。

がむしゃらに怒るのってみっともないなって理性のある人なら思うだろう。ここは漫画の世界。常識なんて要らない。むしゃくしゃしたらぶつけていい。そんな自由さが羨ましくもある。

 会社に行くのが嫌になればローマ字でKAISHAと書けばこちらの勝だ。KAISHAは既に私にコケにされている。ざまあみろ。KAISHAはこの悪意に気づいていない。もう1度言う。ざまあみろ。
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中川ホメオパシー先生は強姦魔がバターになる漫画も描いておりもう完全にどうかしている。
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無人島にひとつだけ何かを持っていっていいならあなたは持っていくか。私は可能であれば中川ホメオパシー先生を持っていきたい。(正しくはお連れしたい)

砂浜に自由に漫画を描いてとお願いしたいし、いよいよどうしようもなくなったら最悪食べてもいい。こんなふうに。
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 中川ホメオパシーの漫画はめくるめく正気ではない世界で支離滅裂、斬新、狂喜、これがメリーゴーランドに乗っかってぐるぐる色んなバリエーションで回ってくるようなものだ。いつだって心がチカチカして笑ってしまう。刺激的なのだ。

 

あぁ、この漫画家にひょんなことで出会えて良かったなと思う。

干支天使チアラットファンということでお知り合いになった人もいる。干支天使チアラットファンの人は皆優しくおもしろく惹かれる人が多い。

好きな漫画を好きなだけ話せる人がいることのありがたさを噛み締めて生きている。

人と人を繋ぐということは容易にできることではない。それができる中川ホメオパシーって不思議でおもしろい。

 中川ホメオパシー (@nakagawa_ho)さんをチェックしよう https://twitter.com/nakagawa_ho?s=09

中川ホメオパシーのツイートはコラージュ画像も結構アップされるのだが、それが絶妙ですごくいい。ここでいう絶妙とは画像に対するちょっとした悪意とか不快感を見事にピックアップしてしっくりするような仕上がりにするのだ。言い得て妙というやつ。

 

 

中川ホメオパシーの漫画にはずいぶん背中を押された。何にしたっておもしろく捉えて笑っていこうと思ってこの3年間生きてきた。目尻の笑いシワはくっきりと刻まれもうクリームやらではどうにもならないレベルだ。

ずいぶん柔らかい顔になったと思う。33歳。これからの顔はどれだけ笑えたかで創られていく。

正直干支天使チアラットが干支が全部揃う前に最終回を迎えてしまったことは寂しい。寂しくて寂しくて最終回を迎えることを知った日は絶望すら感じたし、最終回が来る日など来ないでほしいと思った。

ただ最終回、全力で戦った干支天使たちの姿を見たら寂しいとかそんなことは言えなかった。最後というものは必ず訪れる。それをどう飾るか。中川ホメオパシー先生は干支天使チアラットを華々しく描き終えた。

寂しいとか言うことが野暮になるほど強く美しく完結させた。あぁ、この漫画に出会えて本当によかった。ありがとう中川ホメオパシー。愛してるぜ中川ホメオパシー。これからも中川ホメオパシーにしかできないことを中川ホメオパシーらしく していって。それが中川ホメオパシーの美学で私はそれをとてつもなく愛してしまったのだから。

http://leedcafe.com/webcomic/cheer50/
干支天使チアラット 第50話

生首を持って

変な夢を見た。

手を変え品を変え変な夢をしょっちゅう見るのでそういうもんだと思っているのだが先ほどうたた寝した夢はひどく変な夢だった。

 

夜の街を歩く。消防署で夜中に放水訓練をしている。見知った私の住む街の普段とは違う風景。

畑では夜中にとうもろこしの収穫作業をしている。

おかしいなと思いながら歩く。

ふと気づくと手に生首を持っている。いつの間に持っていたのか。この人をいつの間に殺してしまったのか。おかしな夜につじつまの合わない行動。不安が恐怖がどっと押し寄せる。

生首の顔はずいぶん青ざめていて死者のものだった。そしてその顔はかつて愛した人のものだった。

 

両手で大事に生首を持って顔をまじまじと眺める。なぜ私はこの人を殺してしまったのか。憎いことは多少はあったかもしれないが殺さなくてはいけないようなことはなかったはずだ。

青ざめ冷たくなった口は何も語らない。首から滴るものがあった。生きていたという証のようなものだった。

 

この人にはもう会わないと思っていたけどもう2度と会えないというこの状況をじわじわと恐怖に感じた。

 

失ってしまった喪失感と奪ってしまった罪悪感。頬をそっと包みなんてことをしてしまったのだろうと悲しくなる。これからその思いを背負って生きていかなくてはならないと思うと生きる力がとけだしてなくなってしまいそうになる。

 

きっと殺人の罪でこれから捕まる。逃げようはない。この罪は多くの人の目にさらされ社会に裁かれる。それはとても重苦しく怖いものに感じた。

 

途方にくれてその人に愛していたのよと、生首を見つめる。見つめ合えないこの距離を、その人がいなくなるということを、こんなに怖く思ったことはない。

 

 

そんな夢だった。すごく生々しくて怖かった。事後の感情をここまで感じてしまった。それはどんなドラマや小説よりもリアルだった。私として感じたことだったからだろうか。

ずいぶん嫌な夢をみてしまったと気分が重い。失うことよりも奪うことの方が恐ろしいと思った。夢でよかったと安堵する。できればこういう夢はもう2度とみたくない。

 


吉澤嘉代子「地獄タクシー」Music Video - YouTube

異動初日に遅刻しました

先月突如として命じられた異動初日がやってきた。

中規模療養病院の別のフロアに行くというもので仕事内容は概ね同じ、患者さん、働く場所、共に働くスタッフが変わるだけだ。

異動が告知され、長く連れ添ったスタッフにはご挨拶。大変お世話になりました、と。

そうでもないスタッフにはお世話になりましたと言いつつもこの職場がオープンしたときからいたのは私の方でお世話しましただよね、と思いながら挨拶をした。

とても寂しがってくれる人がいたのは救いで、なるべく優しく親切にを心掛けていた私にとってはそれが評価されたようで嬉しかった。

最終日は特別寂しさも感じることなく荷物の整理をして職場をあとにした。イケメン師長には重ね重ねお礼を言うと「寂しくなります」とのことで残る人が寂しいって言うのはズルいもんだなと思った。

きっと今までいた職場はどんどん悪くなる一方だろう。それを感じていたので離れられるのはある意味良かったかもしれない。


ねね、異動になるってよ - ここから先は私のペースで失礼いたします

 

昨夕関東に直撃した台風の動向には最新の注意を払っていた。

眠りにつく頃に急に雨と風が強まり外を見ると雨飛沫で夜の世界は白んでいた。窓ガラスが揺れる。聞いたことのない自然の音がする。明日大丈夫かなと思いなかなか眠れなかった。30分だけ早く起きることにした。目覚ましをかけて目を閉じる。1時間ほどでやっと眠りについた気がする。

 

 

朝起きると外は快晴で爽やかな空気だ。

これならJRも動くだろうと予測してまた寝る。いつもより15分だけ早く起きて家を出ると駅は人でごった返していた。

電車はノロノロ区間で折り返し運転をしている。このJRに乗るか私鉄を乗り継ぐか悩んだ。

JRなら40分、私鉄乗り継ぎなら80分、よし、JRに賭けよう。これが地獄の始まり。

ノロノロ運転をする電車は20分ほど待つと来た。が、めちゃくちゃ混んでいてもう乗れなかった。寿司詰めもいいところ。それでもこれに乗らなければ…無理に乗ろうとしたがドアの上辺をつかんで体を押し込んでも押し出されてしまう。鞄はどうもはみ出て仕方ない。気合いでどうにかなるもんじゃなかった。

あきらめて降りた。

寿司詰めの中の寿司達がこの世の終わりみたいな顔で乗っているのを見送る。乗れていいな、という気持ちとあんなのに乗れるかよ、死ぬじゃんムリムリ、という気持ちで。

 

次の電車は10分以上してから来た。こちらはもう間に合うか間に合わないかギリギリのところで心臓はバクバクしはじめた。

先程の電車よりはすいていたがこちらも満員電車であることはかわりない。

具合悪くなったら嫌だなと思いながら電車に揺られる。

 

駅に無事着き、改札口へ向かうが全然動かない。JRの駅は地獄絵図だった。人人人。溢れて進まない。警察も来て誘導を始める。軽いパニックだ。駅を出るのにも10分近くかかり仕方なく職場へ遅刻の連絡をいれた。他にもそういう人がいるから焦らず来て下さいと言われる。

こんな天気がいいのだもの。有給とって帰りたい。が、今日は異動初日なのでなにがなんでも行かなければならない。よりによって、なぜ今日なのか。ついてない。こういう日は何をしてもうまくいかない。

私鉄に乗り換えをする。私鉄は普段通り動いていて救われた、と思ったが車内でおならをした人がいてそれをもろに嗅がされることになった。多分前にいた女の人だ。なぜ、今日普段より早く起きて地獄絵図を乗り越えたのにこういう仕打ちをするのか。精神は発狂レベル。そして悟る。

交通網が麻痺するときは出勤するな、と。

例えば今日行かなければダメ、どうしても行かなければ!という事情がある人は優先的に乗せてもらえる、とか、学生さんは午後から授業とか、振り替えが効く人はできればこのラッシュにのらないでほしい。

 

じゃあ私は乗るのか?と聞かれれば乗る。できれば最優先で乗せてほしい。入院患者さんが待っているから。命を守らなければならないから。

 

なんとか5分ほどの遅刻で済み、申し送りは半分聞けた。初日から遅刻。なんてバツの悪い状況なんだ。

ナースステーションにそろりそろりと入り申し送りが終わってからご挨拶をする。そして慌ただしく業務へ入る。

この職場に馴染めるかわからないが、以前一緒に働いていた人もいるのでなんとかなりそうだ。

初日に遅刻したヤツというイメージを払拭するにはただひたすらに仕事をするのみ。

 

それにしても今日という仕打ちには参った。一応台風の影響という名目もあるし、私より後に来た人もいるので「仕方ないよ~」とフォローしてもらえたが、人生でこんなことはもう2度となければいいなと思う。初日くらいパシッときめたいじゃない。

 

台風去った

真夜中にごうごうバチバチと強い風と雨の音が凄かった。

 

8時位は雨も降らず風も強くなくと台風来るんかいな?と思うほど穏やかだったのに。


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※8時頃に転がっていたぬこ。

あいつはダイジョブだったのか。小雨が降る中草むらにタイブしていたよ。


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今は風も止み穏やかな明け方になった。さぁ今日は暑くなるみたいだ。とりあえず平和にいられることに感謝。

 

夜になったら猫チェックしよう。

 

カレンドラクリームを使ってみる

めめは肌がかぶれた。

 

ちょっとねねのせい。ねねがめめのねんねこ大使館に来ていた夏。めめのバンテリンの湿布を何枚か使ったのだ。そして無くなってしまった湿布。代わりにずっと昔に怪我をした際に貰ったロキソニンのパップを使ったのだ。ロキソニンは痛みがすぅと消えて効果は絶大だった。さすが病院で貰うパップだなと思っていた。

使って何日か後、何だか肌が痒い。かゆかゆと思い皮膚を見るとロキソニン型に赤くなっている。

パップでかぶれた。痒いしパップ型の赤い皮膚はダサい。あの時ねねがバンテリンを使わなかったらめめは今こんな皮膚をしとらんとちょっと恨んだ。

 

皮膚科に行ってもな~と思っていたのだがカレンドラと言うハーブの力を借りることにした。ヨーロッパではオロナイン的な感じで使われているっぽいと聞いたことがある。

皮膚トラブルに効くらしく回復力を高めるクリームだとか。

ヴェレダ カレンドラベビーバーム 国内正規代理店商品

ヴェレダ カレンドラベビーバーム 国内正規代理店商品

 

ベビーバームを購入し塗ってみる。するとイライラするような痒みは一切無くなった。以前パップかぶれになったときは皮膚科の薬を塗ってもずっと痒みが取れず辛かった。患部はぐパップ型にしゅぐしゅで見た目も最悪だったがカレンドラクリームは直ぐに痒みが取れて今は皮膚の色がパップ型に茶色っぽいと言う感じだ。私には合っていたと言う感じなのですべての症状に効くかどうかはわからないが物凄く良かった。カレンドラ~凄い!オムツかぶれ用のベビー向けのクリームなので肌に優しいはず。こってりしていて良い香りのクリーム、とにかくサンキュー!助かったぜ。

何になれなくてもいいから

子どものころ憧れていたセーラームーンクリーミーマミ、峰不二子になれなくていいから。

立派な人になれなくていいから。

誰もが羨むような美貌を持つ人になれなくていいから。

たくさんのお金がある人になれなくていいから。

好きな人に愛される人になれなくていいから。

 

私は平井堅が履くビーチサンダルになりたいの。

そう思って目頭を熱くさせる夜もあるの。

 

おわり。

 

 

その男、ちょんまげハリウッドにつき。

まるでちょんまげハリウッド。

人はその男をちょんハリさんと呼ぶ。まるでちょんまげハリウッドの真意はわからないしちょんまげではない。ハリウッドに何かしら関係があるのかもしれないがその男の存在を知ってまだ数年の私にはハリウッドである由縁はわからない。本名は別にある。それでも皆ちょんハリさんと呼ぶ。ちょんハリさんと呼べばその男は返事をする。それが名でいいらしい。

 

夜風が心地いい日にその男は言った。

「下半身をキャタピラに改造します」と。

人魚姫のように右腰に重心を傾けてしなやかに座るその男は再び言った。

「下半身をキャタピラにします」と。

 

手元には焼酎のロックがあった。ずいぶん飲んだらしい。その男の目はすでに輝きを失っていたが、近くにいる美女に蜜が溶けるような視線をくべていた。

 

多分酔ってしまったのだろう。酒にも美女にも。それが男というものだ。普段の目付きとは違うその男はいい声をしている。甘くてほろ苦く響くその声はチョコレートのようだ。彼が声を発すれば世界はとろけてしまう。甘美な声はいつだって囁く。

「下半身をキャタピラにします」と。

 

その男の股関節はずいぶん前から痛みを放つようになっていた。立っても座っても痛いのだ。日に日に痛みを増すその股関節に耐えきれず病院へ行った。エックス線を浴びて写し出されたその男の繊細な股関節は先天性股関節形成不全だった。

左の股関節の痛みはこの先も付き合っていかなければならないらしい。今はまだ痛みが引かないため人魚姫のようにしなやかに座るしかなかった。

 

この股関節が動かなくなったら、歩くことも立つことも難しくなる。その前に股関節を手術しなくては。どうせメスを入れるなら下半身をキャタピラに。

キャタピラになればどんな悪路だってすいすい進める。天災が多いこの国だからこそキャタピラの技術は必要不可欠で日々発展している。

「下半身をキャタピラにします」と言うと美女は微笑んだ。その男のまるで世界一幸せだというような恍惚とした表情でキャタピラ手術について喋った。美女の笑顔は完全にその男のものとなった。

 

メンテナンスの話。寝たきりになったときの話。見た目の話。下半身がキャタピラになった彼はきっと強いだろう。

 

ひとつだけ心配があるとすれば彼が飼っている黒いチワワのことだ。キャタピラで轢いてしまわないよう気をつけてほしい。

 

 

今の技術ではまだ下半身をキャタピラにすることはできない。だけども本格的にガタが来るであろう20年後の未来にはその男の下半身をキャタピラにすることができるだろう。私は見届けたい。手術室へ入っていくストレッチャーの上でサムズアップするその男の勇姿を。

手術中のランプがついている間は神に祈りを捧げて待とう。ここでいう神とはキャタピラの神日本キャタピラー、通称CATだ。

手術中のランプが消えたらふと顔をあげて緊張の面持ちでその男が出てくるのを待つ。全身麻酔から醒めたばかりなのにキャタピラで出てきたその男はあの日のように眼光を黒く鈍く光らせる。

これで全てうまくいく。そう言い残し神奈川県へ消えていった。その後の男の行方は誰も知らない。

 

街角でCATのキャタピラを見かけるたびに涙が溢れる。きっとどこかでまるでちょんまげハリウッドをしているに違いない。あの甘美な声はキャタピラの機械音で消えてしまった。なんでも機械にすればいいというわけではない。きっと今日もどこかの現場で甘美な声を打ち消され生きているのならそれでいいと思うしかないのだ。