先月突如として命じられた異動初日がやってきた。
中規模療養病院の別のフロアに行くというもので仕事内容は概ね同じ、患者さん、働く場所、共に働くスタッフが変わるだけだ。
異動が告知され、長く連れ添ったスタッフにはご挨拶。大変お世話になりました、と。
そうでもないスタッフにはお世話になりましたと言いつつもこの職場がオープンしたときからいたのは私の方でお世話しましただよね、と思いながら挨拶をした。
とても寂しがってくれる人がいたのは救いで、なるべく優しく親切にを心掛けていた私にとってはそれが評価されたようで嬉しかった。
最終日は特別寂しさも感じることなく荷物の整理をして職場をあとにした。イケメン師長には重ね重ねお礼を言うと「寂しくなります」とのことで残る人が寂しいって言うのはズルいもんだなと思った。
きっと今までいた職場はどんどん悪くなる一方だろう。それを感じていたので離れられるのはある意味良かったかもしれない。
ねね、異動になるってよ - ここから先は私のペースで失礼いたします
昨夕関東に直撃した台風の動向には最新の注意を払っていた。
眠りにつく頃に急に雨と風が強まり外を見ると雨飛沫で夜の世界は白んでいた。窓ガラスが揺れる。聞いたことのない自然の音がする。明日大丈夫かなと思いなかなか眠れなかった。30分だけ早く起きることにした。目覚ましをかけて目を閉じる。1時間ほどでやっと眠りについた気がする。
朝起きると外は快晴で爽やかな空気だ。
これならJRも動くだろうと予測してまた寝る。いつもより15分だけ早く起きて家を出ると駅は人でごった返していた。
電車はノロノロ区間で折り返し運転をしている。このJRに乗るか私鉄を乗り継ぐか悩んだ。
JRなら40分、私鉄乗り継ぎなら80分、よし、JRに賭けよう。これが地獄の始まり。
ノロノロ運転をする電車は20分ほど待つと来た。が、めちゃくちゃ混んでいてもう乗れなかった。寿司詰めもいいところ。それでもこれに乗らなければ…無理に乗ろうとしたがドアの上辺をつかんで体を押し込んでも押し出されてしまう。鞄はどうもはみ出て仕方ない。気合いでどうにかなるもんじゃなかった。
あきらめて降りた。
寿司詰めの中の寿司達がこの世の終わりみたいな顔で乗っているのを見送る。乗れていいな、という気持ちとあんなのに乗れるかよ、死ぬじゃんムリムリ、という気持ちで。
次の電車は10分以上してから来た。こちらはもう間に合うか間に合わないかギリギリのところで心臓はバクバクしはじめた。
先程の電車よりはすいていたがこちらも満員電車であることはかわりない。
具合悪くなったら嫌だなと思いながら電車に揺られる。
駅に無事着き、改札口へ向かうが全然動かない。JRの駅は地獄絵図だった。人人人。溢れて進まない。警察も来て誘導を始める。軽いパニックだ。駅を出るのにも10分近くかかり仕方なく職場へ遅刻の連絡をいれた。他にもそういう人がいるから焦らず来て下さいと言われる。
こんな天気がいいのだもの。有給とって帰りたい。が、今日は異動初日なのでなにがなんでも行かなければならない。よりによって、なぜ今日なのか。ついてない。こういう日は何をしてもうまくいかない。
私鉄に乗り換えをする。私鉄は普段通り動いていて救われた、と思ったが車内でおならをした人がいてそれをもろに嗅がされることになった。多分前にいた女の人だ。なぜ、今日普段より早く起きて地獄絵図を乗り越えたのにこういう仕打ちをするのか。精神は発狂レベル。そして悟る。
交通網が麻痺するときは出勤するな、と。
例えば今日行かなければダメ、どうしても行かなければ!という事情がある人は優先的に乗せてもらえる、とか、学生さんは午後から授業とか、振り替えが効く人はできればこのラッシュにのらないでほしい。
じゃあ私は乗るのか?と聞かれれば乗る。できれば最優先で乗せてほしい。入院患者さんが待っているから。命を守らなければならないから。
なんとか5分ほどの遅刻で済み、申し送りは半分聞けた。初日から遅刻。なんてバツの悪い状況なんだ。
ナースステーションにそろりそろりと入り申し送りが終わってからご挨拶をする。そして慌ただしく業務へ入る。
この職場に馴染めるかわからないが、以前一緒に働いていた人もいるのでなんとかなりそうだ。
初日に遅刻したヤツというイメージを払拭するにはただひたすらに仕事をするのみ。
それにしても今日という仕打ちには参った。一応台風の影響という名目もあるし、私より後に来た人もいるので「仕方ないよ~」とフォローしてもらえたが、人生でこんなことはもう2度となければいいなと思う。初日くらいパシッときめたいじゃない。