ここから先は私のペースで失礼いたします

さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

彼氏のいない夏

仕事が終わり少しだけ、ほんの少しだけ涼しい風を受けながら帰る。誰も待っていない家のドアを開けると火事でもあったのかと思うほどの暑さがこもっていた。窓を開け風を通し、窓の縁に腰をかけ夕飯を食べる。

日が沈み風はそよそよと涼しさを増す。久しぶりの心地よい風にうとうとする。横になったらそのまま寝てしまった。

 

起きて何か食べたいなと思い冷蔵庫を開ける。特別なものは入っていない。ブドウジュース、パン、キャベツ、納豆、コーヒーゼリー、牛乳。さっき夕飯は食べたけどもう少し何か食べたい。ラーメンを食べたいような気もするが、軽めにしようと考える。コーヒーゼリーにしよう。

 

コーヒーゼリーは1リットル分作りおきしていて私の家ではいつでもコーヒーゼリーが食べられるようになっている。1度コーヒーゼリーを大量に生産し食べきってから思った。コーヒーゼリーのない生活はなんて味気ないのだ、と。1リットルのコーヒーゼリーを食べきって次の日にはまた1リットルのコーヒーゼリーを作っていた。だいたい1週間くらいかけて食べるので多分この夏はあと3回くらいコーヒーゼリーを作ることになるだろう。

 

リーデルという薄いガラスのグラスにコーヒーゼリー、牛乳、バニラアイスを入れる。

太めのストローをさしベランダで飲む。
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甘くておいしい。バニラアイスがとけて牛乳と混ざってシェイクみたいになるのが極みだと思う。そこへコーヒーゼリーが絡むので吸うと「お!」となる。とてもいい。

 

リーデルのグラスは昔付き合っていた人が「これはとてもいいもの」と教えてくれたので買った。この家に来る人たちにはこのグラスで飲み物を提供する。たいてい「このグラスいいね」と誉められるのでこれからグラスを買おうと思う人にはおすすめする。

 

いい夏の日だな、と独りを楽しむ。誰にも気を遣わず自分だけの世界。ベランダと部屋の境目で風を浴びる。おかまいなく自分の居心地のいい場所を自分で探しまるで猫のようだなと思う。

 

そういえば夏に彼氏がいたことあったっけと考える。あぁ、あったなぁ。あれは何年前だろう。5年以上も前の話だよなぁ。暑い日にデートするのは何年もしていない。夏のデートといえば夜の井の頭公園を歩いて蚊に刺されまくったり、旧岩崎邸庭園のベンチに座って何も話さず何もせず芝生の緑と青い空を見ていたら蚊に刺されまくってその蚊をパシィと叩いて殺して手のひらを血で汚してちょっと引かれた思い出がある。夏のデートは蚊が厄介なのだ。

ここ数年はデート相手すらいないが、その前を遡っても夏に彼氏がいたこと自体がそんなにないし、浴衣を着たり花火を見たりする夏らしいデートはそんなにしていないのだ。

 

花火大会のデートの思い出はもう10年以上も前の話で、その頃とても恋い焦がれていた人と花火を見に行くことになったのだが、あいにく喉風邪をひいてしまい身体は元気なのに声だけガラガラという悲惨な事態になった。花火を見た帰り道コンビニでのど飴を買ってくれたことは今でも忘れられないくらい嬉しかった。たかがのど飴だろうが、好きな人の優しさというのは10年たっても忘れないのだ。結局それは片想いに終わるが夏と言えばのど飴の思い出がある。

 

33歳、平成最後の夏。きっとこの夏も彼氏はできないだろう。

風邪も引かないくらい健康ではあるが暑さにバテて家で昼寝ばかりしている。彼氏はいなくとも冷蔵庫のコーヒーゼリーを好きなように好きなだけ食べて「はぁ幸せ」と思えるくらいには図太く生きている。

新年号となる来年は果たしてどんな夏を過ごすのか。知る由もないが、もし彼氏ができたとしたらコーヒーゼリーと牛乳とバニラアイスを混ぜたやつをリーデルのグラスに注いで飲ませてあげようと思うのだ。(牛乳アレルギーだったら違うものにする)