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さかもツインの健康で文化的なようでそうでもない生活をお送りいたします

ねね、異動になるってよ

組織に属していれば異動は付き物だ。我々は組織の駒でしかないのだから。

もちろん病院に勤める看護師にも異動はある。病院によって時期などはまちまちだが、ねねの勤める先では「新しい風を入れる」ことが目的で10月に定期異動がある。今までやってきたこの異動は全てを掻き乱し失敗感が否めない。スタッフからもくっそ文句がでている。それもそのはず、異動を決めるのがフロアにいない看護部長と事務長なのだ。年老いた看護部長は老害でしかない。なんであいつまだ来てるの?いつ辞めるの?と名高い老害が優秀な軍師な訳がない。一応スタッフ同士の揉め事とか人間関係は人づてに把握しているらしい。この人は働かない、この人は癖がある、この人とこの人は組み合わせが悪い、等々把握した上で色々調整しているつもりのようだ。

 

10月に異動があるのは知っていて、古い人を動かすのでは、という噂がたっていた。もう3年も居着いてしまったねねもその古い人であり異動の対象だろうと予測していた。

勤め先は2フロアの療養病院なので、科が変わるから勉強しなおし、とかそういうのはない。あまり状態の変わらない患者さんを看る仕事だ。業務内容はほぼ一緒なのだが異動先のフロアはアクの強いおばちゃんばかりいて評判が悪い。

というか看護師として終わっている人が多い。おしゃべり、ヘルパーさんへの暴言、悪態、クレームを頂くことも多々ある。仕事ができないおばちゃん、動かないデブ、こんなんでよく資格持って働いているなと思うような看護師がいるのだ。資格だけとり大きな事故もなければ免許更新もなく働ける。怖いことだ。こんな医者いるの?ヤブ医者!みたいな医者の話も時々ネットなどで見かけるがそれと同様こんな看護師いるの?と目を疑うような人もいる。

なんのために仕事をしているのか?

患者さんのため?やりがいのため?こうであってほしいものだが、お金のため、という人も多い。だってスーパーのレジ打ちの時給の倍近くはもらえるから。そういう人が悪いというわけではないけども、やはりもう少し気を効かせて何かしてほしい、と思わずにはいられない仕事っぷりなのだ。

 

今日部長に呼び出された。イケメン師長が「部長室に行って下さい」と絶望的な顔で言ってきたのですぐにピンときた。あぁ異動か、と。

 

部長室に入るなり「異動の話ですよね?」と老害部長に言う。

「そういうことです。」と言ってきたので「嫌です。」と言った。なぜ嫌なのか悪意も込めて話した。

実際に異動先のことはそこにいないから知らないけども、評判はよくないこと、異動先のフロアのスタッフが今のねねのフロアに異動してきて、おしゃべりは多いし仕事は適当、人間性の低さが垣間見られている、そんな人と一緒に働くのは嫌だ、只でさえ今のフロアの雰囲気もダラダラし始めてねねはイライラしているのにこれ以上イライラさせることはやめてくれ、と話す。異動が決定して覆らないのは分かっているのでとことん文句は言ってやろうと思った。

実名をあげて人間性の低さが際立つおばちゃんがどうしても無理と話す。それも分かっているようだった。そのおばちゃんはクレームを受けることも多く何度も注意しているがどうしようもないことを言われる。1人はもうじきどうにかできそうだ、とのことだった。

そこは管理職がしっかり言ってもらわないと困ると念を押す。ヤバい人が居座る環境はまともな人を追い出すだけなのでヤバい雰囲気はヤバみを増す。異動先のフロアはそういう掃き溜めのような場所なのだ。

 

あと異動先のフロアはデブ、ブスが多い。ここでいうデブ、ブスは見た目もまぁそうっちゃそうなんだが、中身のことをさす。

世の中には動くデブと動かないデブに分けられると思う。太っていること病気や体質もあったりするので責められない。ただ、動かないデブというのは本当に動かなくて、床に落ちたペンすら人に拾わせるようなデブが嫌いなのだ。動けよ、と思う。そんな人たちがまともに仕事をするとは思えない。動かないデブの分まで働かなくてはいけないと思うとデブの給料差し押さえて奪いたくなる。

ブスというのは心がブスということだ。人に優しくない。笑顔がない。気遣いができない人のことだ。看護師の国家試験に人格適正検査はない。ブスでも筆記試験の合格ラインをとれれば受かってしまう。だけども接客業と同じくらい、いやそれ以上に笑顔や気遣いが大切だと思う。言葉遣いが荒い、仕事が雑、そんなブスとデブが多いフロアなのだ。ため息が出る。

 

部長にはあなた方が思っている以上にねねは繊細でそういう人たちを見るとイライラしてしまうから嫌だと言った。管理職からすると雑な仕事でも来て仕事してくれたという事実があればいい、そういう人たちはなにを言っても変わらない、と大目に見ているところがある。それは許さない、逐一文句は言わせてもらうと念を押した。

 

今回一緒に異動になるのはねねが信頼を寄せている穏和なおばちゃんだったのでこの人がいるならまぁいいか、と思えるところもある。自分で言うのも難だが、丁寧で的確な仕事をするタイプの2人が異動となる。

異動先のフロアの雰囲気を変えてほしい、ダラダラした働き方を「これじゃいけない」と立て直したいらしい。言いたいことはわかる。けどもイライラすることばかりなんだろうな、と思ったので「今まで以上にピリピリした雰囲気になると思いますけど?」とそれも念を押した。むしろそのピリピリを他のスタッフに感じてほしいそうなので異動の理由はフロアの雰囲気を変えてほしい、そういうことなんだなと理解した。

 

辞めることももちろん考えたが、あと3ヶ月いればボーナスが出る。それだけはもらわないと‼そういう考えがあるので10、11、12月はなんとしても粘らなければならない。

覚悟を決めるしかなかった。

 

 面談を終え戻るとイケメン師長が絶望を滲ませていた。「うちの働き手が取られてしまう。」と困り果てていた。師長には人事の権限がなく今日初めて異動の対象職員を知ったらしい。

ねねは「嫌ですよほんと、ストレスで体調崩します。動悸とか下痢とかしますからね!」と言うと「俺だって~、今度は下からじゃなくて上から血が出る。」と言っていた。

「異動先のフロアはデブが多いから嫌だ、10月は白衣もダサいのになるし嫌だ本当に嫌だ」としきりに訴えておいた。精神に異常を来したら即労災申請しよう。そして仕事を休んでどこか遠くへ旅行しよう。それがいい。

 

多分こんなにごねる人もいなかっただろう。師長は面談が長引いていたので「ごねてるんだろうなと思った」と言った。その通り、めっちゃごねた。

 

世の社会人の人はみんな大人だなぁと思う。出向、異動、赴任、色々あるだろうが場所を変わるということはストレスなのだ。転職するよりマシなのかもしれないけど、ねねにとって今回の異動は転職したほうがマシ。それが前向きな異動だとしても。

 

さて、これからごねまくって管理職に多大なストレスとプレッシャーを与えるとしよう。ねねが辞めるときは老害も道連れだ。

よく触らぬ神に祟りなしと言ったもんで今の職場では正論と的確な仕事ぶりで触らぬ神の少し手前にいるかと思っていたがまだ足りなかったらしい。もっと、もっと声すらかけられないような神にならなくては。異動も頼めないレベルの聖人になりたい。

まだまだ触れる平民だったことを思い知った。無念である。