ここに来たのは運命だったのかもしれない。大げさな言い方だがあれよあれよと話が進み導かれるようにやって来た。全ての運を使い果たしてでも来てよかった、そう思えるホテル、それがナポレオンである。
いつか行ってみたいと思っていたが青森県おいらせ町というのは埼玉県民にとっては最果ての地のような場所でしかも最寄り駅から徒歩で行ける気軽さはない。遠方から向かう人は八戸駅からレンタカーが1番良いだろう。
初めて会うフォロワーさんとラブホ巡りの旅に行った話 - ここから先は私のペースで失礼いたします
(ナポレオンアタックした旅の様子はこちら↑)
なかでも貝殻のベッドのお部屋があるということはナポレオンのHPから見ていたのでここはどうしても!と訪問。8号室、エマニエルである。
海の色のようなスリッパ。
少し震える手で扉を開ける。
部屋は薄暗く電気のスイッチを探す。
エマニエルにふさわしいレリーフだ。
!!!
本当に!貝殻ベッドだ!
真珠のような輝きをするベッドライト!
噂には見知っていたけど、なんて美しいのだろう。多分国内にも数えるほどしかないであろう貝殻ベッド…ついにこの目で見てしまった。夢みたい。
柔らかなカーブ。
ゆらりとかかるレース。
貝殻は軽そうな素材でぶつかっても痛くない。
横から見るとこれくらいの高さがあるので頭がぶつかる心配もそうそうない。
ベッドに寝そべってみると海のなかにいるような色をしている。気分はもうマーメイドだ。
カバーも水色のサテン生地で恋人たちがなめらかに泳ぐにはちょうどいい。
俗世のことなんか忘れて貝に身を委ねたらいい。
これはモンローシーソーベッドというらしい。
ばねのベッドであり乗るとユラユラッッと揺れる。乗り心地はトランポリンの弾まない不安定さだけ残した感じ。おもしろい。昭和のラブホテルにはこのようなものがあったのだろうか。見慣れぬベッドの使い方はご想像にお任せする。
テレビ。
漫画。
至れり尽くせりなところがある。
洗面所。
バスルーム。
海を意識しているのか青を基調としていてロマンチックだ。
鏡も広いので欲情を煽ってしまうかもしれない。煽ったらいいの、こういう場所では。
ペンギンの顔みたいな蛇口。
曇りガラスになっているがちょっと透けるかもしれない浴室の壁。すごくいい。
熱い視線はどこへ。
昭和の遊び心とか、見たことないもんを見せてやろうという驚かし心とかを時代を越えて真っ当に受けてきた。それはもうものすごく心が震える体験だった。来た人を楽しませたい、喜ばせたい、ひとつひとつがそんな心意気で作られている。
時代が変わっても心地よく過ごせるよう守り続けている人たちの努力も忘れてはならない。本当にありがたいことなのだ。
不思議と古さを感じさせない、昭和の煌めきだけがありありと生きているホテルだった。この煌めきを見るためにここまで来てよかった。
できればいつまでもこのままでいてほしい。ここはナポレオンという運命なのだから、いつまでも強くて美しくて眩しくあって。革命の光は私の生きる希望なのだから。
2020年10月訪問。