大都市のホテル街はなんだか目を合わせてはいけない場所のような気がする。誰の目にも触れないように深い色のホテルに吸い込まれるように入った。
ここは新宿松月。都会的な駅前とは趣が違うエリアでひっそりと昭和が続いている。
2階にあるフロントへは階段で向かう。
滴り落ちる花のような照明がよかった。
見とれながらフロントへ。部屋パネルはなく空いているお部屋に通されるシステム。
エレベーターで5階へ。
人気のない薄暗い廊下を探りながら歩く。
おっとこれは隣の部屋。
今回入室したのは502号室、葵。
各部屋植物の名前がつけられている。
スモーキーな色合いの廊下を進む。
右の襖を開けると
蛍の光だと思った。
写真ではそこそこの明るさがあるが実際はもう少し暗い。
どこかの温泉旅館かと思うような調度品。
鏡台。乱れ箱に収まる浴衣。 置き型の空調。
丸い灰皿。
湯飲み入れ。座布団。どれも時間を止めて保存していたかのよう。
寝室は襖で仕切られた奥に。
電気をつけてもこんな明るさ。
夜はよほど暗いだろう。この暗さでよく眠れそう。
枕元の照明はこんな感じである。
枕元にも灰皿があるけど寝タバコはダメよ。
洗面所の下のグレーの機械はなんだかわからなかった。
浴室の蛇口がお湯と水でわかれてるのと蛇口スパウトが長いのがよかった。
タイルやすのこがノスタルジックさに花を添えたよう。
お手洗いは和式に被せた洋式スタイル。特に不便さはない。普通に使える。
昭和のよさが見事に現存している。文豪たちにここに籠って執筆活動をしてほしい。静かな畳の上で紙をなぞる音が響くのを布団に横になりながら聞いてみたい気もする。
慌ただしく過ぎていく都会の時間を少しだけ止めてくれそうな場所だな。
フロントに電話をかけ退出。
ここまで完璧な昭和をどうか文化として保存してほしいと思う。叶わぬ願いかもしれないけど。だから訪ねては記録しておきたい。
新宿のオアシス。松月。
2022年1月訪問