御茶ノ水の小高い丘の上にはとても素敵な洋館がある。その名を山の上ホテルという。
山の上ホテル HILLTOP HOTEL 御茶ノ水(公式サイト)
竣工は1936年。昭和11年。チャールズ・チャップリンの2度目の来日、モゾロフがバレンタインチョコレートの広告を初めて出したり、布団にシーツをかけるのが流行りだしたりと、西洋に追い付け追い越せと日本の文化が変わり活気づいていた頃である。
建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計したアールデコ様式の建物は、川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、山口瞳など錚々たる文豪たちが愛用した“おこもりホテル“。
もともとは西洋の生活様式やマナーを日本の女性に啓蒙する施設として利用されていましたが、太平洋戦争後のGHQ接収解除を受け、1954年にホテルとして再スタートを切りました。
↓下記より引用
戦後にホテルとして営業を開始した山の上ホテル。全35室のひっそりとしたホテルで今に至るまで当時の文明開化後の日本の華やかさを守り続けているような場所である。
御茶ノ水駅を出て神保町方面へ歩いていくと看板が出ている。
小高い丘を登っていくとその先にあるのが山の上ホテル。
シンメトリーの外観に圧倒される。
ちょうどクリスマスの飾り付けがされておりクラシカルなホテルの飾り付けの品の良さにときめく。
赤い絨毯に映えるツリーがお出迎え。
フロントでわくわくしながらチェックイン。
渡された鍵にあなたは何を思うか?
これは夢の世界へ行くための鍵だと思った。
開けよう。
………
ようこそ407号室へ。
お待ちしておりました。
今宵のお部屋は古くて新しくてきれいで夢みたいなお部屋です。
あなた方をもてなしくつろいで頂くことが我々の役目なのです。
どこに座ってもいいのですよ。
お茶もお茶菓子も用意して御座いますから。
ペンと紙も御座います。あなたの好きな方への手紙を書いても良いのです。
アメニティはきちんと揃えてあります。大切なお客様にはできるだけ身軽で来ていただきたいので。
見たことのない高級トイレットペーパー、お好きでしょう?
洗面所はレトロだけど清潔感があります。タイルが洒落ているでしょう。
古いものを新しいままに使うことはできないけども美しく使うことが当ホテルの自慢なのです。
おや、お出掛けになられますか?それでは行ってらっしゃい。
山の上ホテルの素晴らしさをその目で確かめてきてほしいです。
フロント横のロビー、お好きですか?どうぞお掛けなさって。
小さな本棚が御座います。
クリスマスですから素敵な絵本を読んでみてはいかがですか?
小難しい辞書でも良いです。
好奇心で手を伸ばすことが大切なので中身は分からなくても良いのです。
お向かいのバーの前には当ホテルの歴代の品々が展示されております。
レトロなものがお好きなあなたには堪らないものでしょう。
アールデコの装飾というのはこの優雅な曲線が特徴なのです。
シンプルにするのもいいけども、見て喜ばしい気持ちにさせる建築が当ホテルらしさなのです。
大きな窓とシャンデリア、赤いカーテンを眺めながらここで新聞を読んだり待ち合わせをするのもいいじゃないですか。
私が時をお知らせしますから。
エレベーターもありますが、この螺旋階段もどうぞ使ってみてください。
赤い絨毯の階段を登るってお姫様みたいな気持ちでしょう?
楽しく登れますように。
天井の細工をご覧下さい。
こんなステンドグラスがあれば4階まで昇るのも楽しいものです。
フロアの調度品も見ていって下さい。
座りたくなる椅子でしょう。
箪笥もあります。なにも入っていない引き出しです。開ける楽しみをどうぞ。
探検はお済みですか?
でしたらお休みの準備を。
浴衣を御用意しております。
左のボタンはクラシック音楽が流れるのでお好きなチャンネルを押してください。
さぁ、夜は長いですから。どうぞゆっくりお休みくださいませ。良い夢を。
……
おはようございます。よく眠れましたか?パリッとしたシーツは心地が良いでしょう。非日常に包まれた朝というのはこんなにも清々しいのです。
お支度が済みましたら地下へ行きましょう。朝食の用意が御座います。
どの席になさいましょう。窓際の席にご案内いたしましょうか。
明るくて外の様子が伺えます。
たまには気取った食事もいいものですよ。
食卓に花があるだけでこんなにもときめくものです。一輪挿しはあると便利ですよ。
お待たせいたしました。
まずはサラダから召し上がれ。
パンはいくらでもあります。
バターでもジャムでもお好きなように。
メインデッシュは卵とソーセージ、温野菜。
見た目が美しいと心が喜びで満たされるのがわかりますでしょう?
食器の一つ一つも特別なものです。山の上ホテルというのはそういうところなのです。
さぁ、お腹が満たされたら外も探検してみて下さい。
青空によく映えるのがこの看板。
バーへの入り口。
ホテルのバーというのは洒落ていて大人の集う場所です。特別な場所なのです。
実はチャペルもあるのです。
ここで結婚式を挙げる方もいらっしゃいます。
静かなこの場所で愛を誓うのも素晴らしいと思うのです。
………
そろそろお別れの時間です。お支度をなさってください。
そう、私は鍵にございます。夢のようなひとときをご案内させて頂きました。いつかまた会える日まで。ここで変わらずお待ち申し上げております。
………
山の上ホテル。そこはタイムトラベルをしたかのような不思議な洋館だった。
お土産にキャンディーを買った。
甘美な贅沢がここにある。
素敵な気分に浸れて夢の続きを見たいと写真を見返す。いつまでもこのホテルがこのままの姿であり続けてくれたらいいなと思う。クラシックホテルの良さとは昭和初期の世界を体感できるところだと思う。本や映画で見るだけではなく感じること。それは恋い慕うというような感情に近い。好きなものはたくさんあった方がいい。また行きたい場所もたくさんあった方がいい。ここはそんなホテルなのである。